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■ how to start Dylan

ベスト盤 | おすすめオリジナル | ライブ盤 | 映像で見るディラン

 ここでは僭越ながら、これからはじめてボブ・ディランの音楽を聴いてみようと思っている人のために、おすすめのアルバムをいくつかあげておこうと思います。店頭でCDを選ぶときの、ささやかな参考にして頂けたら嬉しいです。

 ディラン・ファンというのはわりと頑固なこだわりを持ったマニアックな人が多くて、実は私がそうなんですが(^^)、ここでは個人的なこだわりや見解はとりあえず極力抑えて(むむっ)、例えるなら農協団体が自民党に票を投じるようなごくごく一般的な視点に立ってピック・アップしたいと思います。

 すでに熟知されている方は、何かと異論もあるやも知れませんが、どうぞ軽く聞き流してやって下さいませ。

 

 

 

ベスト盤

 

 まず手始めに無難なベスト盤の類から聴いてみようと思う方。ディランの編集盤は、最近のものも含めて何枚か出ています。

 

 67年に出た初のベスト「Greatest Hits」はごく一般的ですが、60年代の名曲が簡潔かつコンパクトにまとめられていて、手頃な一枚ではないかと思います。続編の「Greatest Hits vol.2」は2枚組ということもあり、前者が気に入ったら買い揃えたいという感じでしょうか。「Greatest Hits vol.3」には70年代から90年代に至る、それ以降の活動がわりとソツなく凝縮されています。後期のディランを知りたい方にはおすすめ、かな。

 

 数年前に出た最新の「The Best Of Bob Dylan」は、30年以上ものディランの膨大な歴史を強引に一枚のCD にまとめてしまったような企画ものですが、おおざっぱに全体を眺めたい人にはこれもいいかも知れません。曲数も多いですし。

 

 お金なら腐るほど持っているという人、あるいは余裕はないが音楽のためなら血を売ることも厭わないという人にぜひおすすめしたいのは、85年に出たLP5枚組(CDは3枚?)の豪華ボックス・セット「Biograph」一万円です。主要な代表曲に貴重な未発表音源を巧みに織り交ぜたこのセットは、まるで巨大な一冊のボブ・ディラン物語を読むような感じ。読み応え充分の詳細なブックレットも付いていて、これだけ聴いてくれたら私も文句の言いようがありません。

 

 他に70年代後半に日本で編集された「Masterpieces」というセットものがあり、なぜかCD3枚組の輸入盤として現在でも出回っているようですが、こちらもライブ・ヴァージョンなどを含めた雑多な選曲ながら、いろいろ入っていて結構楽しめます。

 またCD3枚組の「the bootleg series vol.1-3」は、全曲未発表音源を集めたいわばコレクターズ・アイテムなので、初めての方にはちょっとおすすめできないかと思います。

 

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おすすめのオリジナル・アルバム

 

 ツギハギの編集ものより、当時のオリジナル・アルバムをどれか一、二枚ほど聴いてみたい、と思っているような方。

 

 アコースティックな弾き語り、素朴な感触がお好きなあなたには、ディランの原点ともいえるフォーク時代の二枚   The Freewheelin' Bob Dylan」と「The Times They Are A-Changin' (時代は変わる)」をおすすめします。アルバム全体の雰囲気から言うと後者の方がまとまりがあるように思いますが、「風に吹かれて」や「北国の少女」「はげしい雨が降る」「くよくよするなよ」などの不滅のクラッシックスが収録された前者も見逃せません。

 

 何が何でも60年代のロックのディランだ、というあなたには、やっぱりここは歴史的名曲 Like A Rolling Stone の入った「Higway 61 Revisited (追憶のハイウェイ61)」か、ディラン・ロックの最高作といわれる「Blonde On Blonde」でしょうか。この二枚はおそらく誰も文句なしの定番。どちらも甲乙つけがたいですが、前者が非常にソリッドな核のようなサウンドだとしたら、翌年に出された後者はある意味で多彩で自由奔放な展開形といえるかも知れません。

 もうひとつ、ディランがフォークからロックへと移行する重要な時期に出された「Bringing It All Back Home」、これも逸品揃いで容易に捨てがたいのですが.....

 

 60年代以降のアルバムの中では、これもやはりと言うべきか、まず70年代の「Blood On The Tracks (血の轍)」と「Desire (欲望)」の二枚をあげたいと思います。前者は粋でシンプルなアコースティック・サウンドに乗って語られるストーリー・テラーとしてのディランが魅力的な絵画的意欲作で、後者は全曲に配されたジプシー風のヴァィオリンの音色がエキゾチックで、雰囲気のある洗練された作品集に仕上がっています。また後者は、一般にディランがどうも苦手という人にも例外的に好まれる作品のようです。

 

 80年代以降からは「Infidels」と「Oh Meacy」でしょうか。前者は Dire Straits のマーク・ノップラーのプロデュース作で、シャープでメロディアスな逸品。後者は音楽の熱帯雨林ニューオーリンズで録音された50歳ロック・シンガーの懺悔録とでもいうべき、非常にディープな捨て身の一枚。

 

 いちばん新しいところでは、グラミー賞も受賞して話題になった「Time Out Of Mind」があり、奇妙な仄暗さに支えられた現代版ブルース・アルバムといった趣で聴き応えがあるのですが、はじめてディランを聴く人向けには、ちょっと重たくてどうかな、という気もします。

 

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ライブ盤

 

 続いて、スタジオ録音より熱いライブを聴いてみたいんじゃ、という方のために。ディランももちろん、いくつかのライブ・アルバムがあります。

 

 74年に出た初の二枚組ライブ盤「Before The Flood (偉大なる復活)」は、盟友 The Band との息のあった共演が楽しめるストレートなライブ・アルバムです。

 ローリング・サンダー・レビューと称する音楽一座を引き連れ全米を回ったときの実況録音「Hard Rain(激しい雨)」は個人的にいちばん好きなライブですが、ここには自由奔放でワイルドかつ繊細なディランの露わな姿があるように思います。

 それ以降のライブ盤は、76年の初来日公演を収録した「At Budokan (武道館ライブ)」は選曲こそベスト・オブ・ベストのもののかなり変則的なアレンジに変貌してしまっている曲が多いいし、その後のヨーロッパ・ツアーの模様を収めた「Real Live」も、また Greatful Dead とのお祭りジョイント盤「Dylan & The Dead」や「MTV Unplugged」などどれも、残念ながら強烈なインパクトにはいまいち欠けると言わざるを得ません。グラミー受賞に乗じて出されたシングル企画ライブ「Love Sick」「Not Dark Yet」の二枚も、かなりレアな音源のためマニア以外にはおすすめできないかと思います。

 

 他に、ディランの芸能生活(?)30周年を祝って、豪華キャストが一堂に集い催された記念ライブの模様を収録したビデオとCD(「30th Anniversary」)が出ていますが、これはディランの多彩な作品を、馳せ参じた老若男女のさまざまな個性派アーティストたちの解釈で聴く、という意味ではお祭り企画ながらとても楽しめるアルバムで、特にエリック・クラプトンやルー・リード、ジョニー・ウィンター、ニール・ヤングらの演奏は滅多に聴けない白眉ものです。ディラン本人は少々ヨタっていますが(^^)

 

 そうそう、大事なライブをひとつ忘れていました。「the bootleg series」の第二弾として最近公表されたCD二枚組の「LIVE 1966 The 'Royal Albert Holl' Concert」。前述したようにフォークからロックへというディランの重要な転換期に行われた、ひりひりするようなステージの模様が、30年の月日を超えて再現された貴重なライブ。前半のアコースティック・セットと、後の The Band を従えた後半のエレクトリック・セットとに分かれていますが、後半ステージでの「ユダ野郎」「嘘つきめ」云々の聴衆とののっぴきならないやり取りを聴くだけで、もうロックン・ロールです。

 

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映像で見るディラン

 

 最後に、生の動いているディランを見たいという方に。

 

 公式に発売されているビデオ作品の中では、何といっても65年のイギリス・ツアーのドキュメント「Don't Look Back」をぜひイチオシでおすすめしたい。ステージの映像は少ないですが、皮肉に満ちた記者会見の模様や追っかけファンとの辛辣なやりとり、楽屋裏での寡黙な表情、宿泊先での仲間内のトラブルや、マネージャーの不敵な商談の模様など、若きディランとかれを取り巻く時代の空気が透けて見え、見応えのある映像に仕上がっています。このビデオは最近値段が下がって、お求め易くなりました(私が買ったときは一万円以上した)

 

 それ以外の公式ビデオでは、86年の Tom Petty & The Heartbreakers をバックに従えたオーストラリア公演の「Hard To Handle」は無難なところ、かな。もうひとつ「MTV Unplugged」のビデオ編は、久しぶりのサングラスと水玉シャツが格好いいけど、演奏の方はこれもまあまあといったところでしょうか。

 正規のビデオ作品ではないですが、前述した「Hard Rain(激しい雨)」のときの演奏を一時間の番組にまとめたものが昔、日本でもテレビで放映されたようで、その海賊版ビデオが出回っていて、これがなかなか迫力のあるステージなので、もし手には入ったらそんなのも見ていただきたいとも思いますが....

 

 他にゲスト出演等の数曲ご披露ものでは、前述の「30th Anniversary」のビデオ版をはじめ、ビートルズのジョージ・ハリスンが主催したチャリティ・コンサート「The Concert For Bangladesh」、The Band の解散コンサートの模様をマーティン・スコセッシが映画化した「The Last Waltz」、それに先頃出たばかりのエリック・クラプトンのビデオ「Eric Clapton & Friends(クロスロード・コンサート)」でも一緒に Crossroad なんかを歌っています。

 

 また役者(?)としてのディランでは、73年にサム・ペキンパーが監督した映画「Pat Garret & Billy The Kid(ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯)」にちょい役として出演していて、映画のサントラも手がけています。

 それから、いまも発売されているかどうか知りませんが(たぶん絶版だろう)、87年の主演映画「Hearts Of Fire」のビデオがかつて日本でも発売され、映画自体はまあ何ともあまりぱっとしない内容ですが、全編に渡って演技する熟年ディランが見られるのがせめてもの慰みです。

 

 1999.11

 

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