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Bringing It All Back Home 1965

アルバム・コメント 

Side A
1. Subterranean Homesick Blues
2. She Belongs To Me
3. Maggie's Farm
4. Love Minus Zero / No Limit
5. Outraw Blues
6. On The Road Again
7. Bob Dylan's 115th Dream

Side B
1. Mr.Tambourine Man
2. Gates Of Eden
3. It's Alright, Ma (I'm Only Bleeding)
4. It's All Over Now, Baby Blue

 

 

 

 

 

 

 さて書き始めようかと10分間、キーボードを前にじっと坐ってから「この時期のディランのアルバムに、いまさら解説なんかいらねえだろ」とやけくそな気分になりました。

 当時は大きな賛否両論を巻き起こしたらしい、いわゆる生ギターのフォークからエレクトリックなロックへの転換期に制作された作品で、それをまさに象徴するようにLPではA面にエレクトリック、B面に旧来のアコースティックな弾き語り曲が分けて並べられています。

 もう何というか、ブレーキを踏んだままアクセルを踏み込んで回転計がすでにレッドゾーンに突入してるってえか、テクニシャンのアケミちゃんにこれでもかといわんばかりの各種サービスを含むメガトン攻撃を喰らってもうもうもう発射寸前ってえか、すでにこらえきれずに●面発射ってえか(スイマセン、品がなくて)、とにかくここから「Highway 61 Revisited」「Blonde On Blonde」と続く3枚は、とにかくとにかく怒濤の世界名作昔話だから、うだうだ言ってないで知らない人はすぐ買ってくれ。

 曲の方も粒揃い。いかしたアナーキストのラップ曲 Subterranean Homesick Blues で爽快に幕を開け、トム・ウェイツいわく「とにかくみんながこんな具合に叫びゃあいい」ってな労働放棄ソングの Maggie's Farm 、そして理想的な女性像を描いたブレイク風の詩が秀逸な Love Minus Zero / No Limit もレノンの Woman と並ぶ永遠の胸に沁みる女性讃歌です。

 B面のアコースティック・サイドも息の抜けない強者ばかりで、何でも Mr.Tambourine Man から It's Alright, Ma (I'm Only Bleeding) までの20分近くを、一気に続けてワン・テイクで録ってしまったというのだから、その心意気も伝わってきます。 Byrds のカバーで大ヒットした名曲 Mr.Tambourine Man、深遠な Gates Of Eden、8分近くに及ぶ迫真の黙示録的思想夢ソングの It's Alright, Ma (I'm Only Bleeding)、そして永遠の心機一転まき直し曲の It's All Over Now, Baby Blue まで。

 若さと才気と覇気に富んだ、もうひとつのディランの、そしてロックの再出発点ともいえるとても重要なアルバムであると思います。何かが弾け、動き出した。そんな感じでしょうか。

 アウトテイクは、Subterranean Homesick Blues の前身ともいえるソロ・バージョンと、ストーンズ的なストレートなロックの If You Gotta Go, Go Now、そしてジョーン・バエズによって歌われていたアコースティックの Mama, You Been On My Mind、Farewell, Angelina などの未発表曲が「the bootleg series vol.1-3」に、そしてピアノ弾き語りの魅力的な I'll Keep It With Mine が「Biograph」にそれぞれ収録されています。

 

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Subterranean Homesick Blues

 

 

 ジョニーは地下室 クスリを調合中 オレは舗道で 政府について考えてる トレンチ・コートの男 バッジをつらつかせ 言うことにゃ“悪い咳がとっつきやがった 追っ払っちまいたいもんだぜ” 気をつけろ おたくのしわざだろ いつの間にやら なのにまたやっちまってる 路地裏は避けな あたらしい友達を探すなら アライグマの毛皮帽の男 大きな囲いのなかで 11ドル欲しがっているが あんたは10ドルしか持っていない

 

 マギーは足早に来る 顔はすすで真っ黒け 話すのは“暑さでベッドに苔が生えて 電話は盗聴されている”とか何とか 彼女いわく噂では ガサ入れは5月のはじめ 地方検事命令で 気をつけろ なにをしたって構わんが しのび足であるけ “No Doz”(*1)などやめとけ 消防ホースを持ち歩いたり 鼻をキレイにしている手合いは 避けた方が無難というもの 私服を見張れ 風がどっちに吹くかを知るのに 気象予報士なんていらない

 

 病気になったり治ったり インクの泉のまわりをうろつき ベルを鳴らし 説明困難 いったい何を売りに来たのやら ふんばり しめだされ もどって 点字を書き 留置され 保釈中にトンズラ しくじったら 軍隊入り 気をつけろ やられるぞ だが映画館のまわりにたむろする ヤクの常用者に詐欺師ども 六度目の失敗者や 渦のはたの少女など あたらしい間抜けを探しても リーダーにはしたがうな パーキング・メ−ターを監視しろ

 

 おお、産まれてきて 大事にされ ショート・パンツ ロマンス ダンスを習い 着飾り 祝福され 成功者たらんとし かれを歓ばせ 彼女を愉しませ 贈り物を買い 盗まず くすねず 20年学校へ通ったところで 二交代制工場勤務の昼間組さ 気をつけろ すべては隠されてる マンホールへ飛び降りたほうがいい じぶんのローソクに火をつけろ サンダルは履くな スキャンダルは避けろ ルンペンになろうなどと思うな ガムを噛んだ方がいい ポンプはいかれてる バンダル(*2)たちが取っ手をはずしたから

 

*1 : No Doz.....コンビニでも買える程度の眠気覚まし(カフェィンのタブレット)の商品名。(きはらさんより御教示頂きました)

*2 : vandals.....5世紀にローマを略奪したバンダル族の意から、芸術・文化の破壊者 ; 公共物などを故意に壊す人。

 

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Maggie's Farm

 

 

マギーの農場ではもう働きたかねえ
マギーの農場ではもう働きたかねえ
朝起きて
手を合わせ 雨を乞う
頭ん中はヤクザな考えがいっぱいで
いまにも気狂いになっちまいそう
おれに床掃除をさせる彼女のやり方と来たら酷いもんだ
マギーの農場で働くのはもううんざりだ

 

マギーの兄弟の下ではもう働きたかねえ
マギーの兄弟の下ではもう働きたかねえ
やつはあんたに5セント恵んでくれる
あんたに10セント恵んでくれる
にこやかな笑みを浮かべて
楽しんでるかい? とあんたに訊く
そしてあんたがドアをバタンと閉めるたびに罰金を取り立てる
マギーの兄弟の下で働くのはもううんざりだ

 

マギーの親父の下ではもう働きたくねえ
マギーの親父の下ではもう働きたくねえ
逆らおうものなら
やつは葉巻をあんたの顔に押しつける
やつの寝室の窓は
頑丈なレンガで出来ていて
ドアの周りには州兵が番をしている
マギーの親父の下で働くのはもううんざりだ

 

マギーのお袋の下ではもう働きたくねえ
マギーのお袋の下ではもう働きたくねえ
彼女は使用人の一人一人に
人と神と戒律について説教を垂れる
みんなが言うには
彼女がこの家の黒幕だとさ
年齢は68だが、自分じゃ24だと抜かしていやがる
マギーのお袋の下で働くのはもううんざりだ

 

マギーの農場ではもう働きたかねえ
マギーの農場ではもう働きたかねえ
おれは奮闘努力して
自分らしくいようとしたが
みんなはあんたを
その他大勢といっしょくたにしたい
あんたがあくせく働いてる間 やつらが唄ってるんでおれは気が滅入って仕方ない
マギーの農場で働くのはもううんざりだ

 

 

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Love Minus Zero / No Limit

 

 

激することも 理想を掲げることもなく
ぼくの恋人は沈黙のように話す
自分が誠実だと言う必要もない
それでも彼女は 氷のように 炎のように真実
ひとびとは薔薇の花束を抱いて
時間きざみで約束をする
ぼくの恋人はまるで花のように微笑む
聖バレンタインの贈り物では彼女を買えやしない

 

10セント・ストアやバス停で
ひとびとは状況について対話する
本を読み 引用を繰り返し
壁に結論を描く
未来を語る人もいるが
ぼくの恋人はもの静かに話し
失敗に似た成功などはないし
成功はけっして失敗でないことを知っている

 

マントと短剣がぶら下がり
奥様方がキャンドルに火を灯す
騎手たちの儀式においては
チェスの下っ端の駒でさえ恨みを抱く
マッチ棒でつくられた彫像たちが
重なり合って崩れる
ぼくの恋人はウィンクし 気にもとめない
言い争ったり裁を下すには あまりにも知りすぎているから

 

真夜中の橋がふるえ
田舎医者がうろつきまわる
銀行家の姪たちは完璧を求めて
賢者たちからの贈り物をひたすら期待している
風がハンマーのようにうなり
夜は凍てつき そして雨模様
ぼくの恋人はワタリガラスのよう
傷ついた翼を ぼくの窓辺に

 

 

(*きはらさんの訳を参考にさせて頂きました)

 

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Mr.Tambourine Man

 

 

なあ タンバリン楽士さんよ 一曲やってくれないか
眠くはないし 行くところもない
なあ タンバリン楽士さんよ 一曲やってくれないか
小気味よいリズムの朝に あんたのあとをついていこう

 

夕べの帝国は砂粒に還り
この手からかき消えたというのに
おれはここで盲同然に突っ立っていて まだ眠くもない
この倦怠は驚くほどで おれは足に焼き印を押され
会う人もなく
古ぼけた空っぽの通りは、夢を見るには廃れている

 

なあ タンバリン楽士さんよ 一曲やってくれないか
眠くはないし 行くところもない
なあ タンバリン楽士さんよ 一曲やってくれないか
小気味よいリズムの朝に あんたのあとをついていこう

 

あんたの渦巻く魔法の船に乗った旅におれを連れて行ってくれ
おれの感覚は剥き出しのまま 手は握っても感触がなく
歩くにはつま先が痺れて ただブーツのかかとが
さまよい始めるのを待っているだけ
どこへでも行けるさ 消えちまえる
おれ自身のパレードの行く手に、あんたのゆらめく呪文をかけてくれ
きっとそいつにかかってみせるから

 

なあ タンバリン楽士さんよ 一曲やってくれないか
眠くはないし 行くところもない
なあ タンバリン楽士さんよ 一曲やってくれないか
小気味よいリズムの朝に あんたのあとをついていこう

 

狂ったように太陽を横切る回転や振動や笑い声が聞こえるかも知れないが
誰かを狙っているわけじゃない ただ足早に逃げていくだけのもの
そして空のほかには邪魔な柵もない
あんたのタンバリンに合わせて
跳びはねるひと巻きの韻文のかすかな痕跡が聞こえても
それは隠れているボロを着た道化師にすぎないから
てんで気にしないね
そいつはやつが追い求めていて
同時にあんたも見ているものの影でしかないんだから

 

なあ タンバリン楽士さんよ 一曲やってくれないか
眠くはないし 行くところもない
なあ タンバリン楽士さんよ 一曲やってくれないか
小気味よいリズムの朝に あんたのあとをついていこう

 

だから連れ去ってくれ おれのこころの煙の輪をくぐり
霧深い時間の廃墟へとくだり 何かに取り憑かれ怯えた木々や
凍てついた葉っぱを過ぎ 吹きさらしの海岸をはなれ
気違いじみた悲しみのよじれた手から遠く逃れて
そうさ、すべての記憶や運命を波の奥深くへ沈めて
海を背景に サーカスの砂にかこまれ
片手を気ままに振ってダイアモンドの空の下で踊れるように
明日まで 今日のことは忘れさせてくれ

 

なあ タンバリン楽士さんよ 一曲やってくれないか
眠くはないし 行くところもない
なあ タンバリン楽士さんよ 一曲やってくれないか
小気味よいリズムの朝に あんたのあとをついていこう

 

 

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It's All Over Now, Baby Blue

 

 

さあ、行かなくては 必要なもの 長持ちするようなものを持って
とっておきたいなら何であれ さっさとつかんでしまうがいい
向こうに銃を手にしたきみの孤児が立ち
太陽の火の粉のように泣いている
こちらにやって来るあの聖者を見るがいい
もう何もかもが終わりなんだよ、ベイビー・ブルー

 

ハイウェイはばくち打ちのものだ きみの感覚を使うといい
偶然の一致からきみがかき集めたものを利用するんだ
きみの通りから来た素手の絵描きが
きみのシーツに狂気の模様を塗りたくっている
この空もまた きみの下に折り畳まれていく
もう何もかもが終わりなんだよ、ベイビー・ブルー

 

きみの船酔いの水夫たちは全員 漕ぎ戻っていく
きみのトナカイの兵士たちも みんな家へと帰っていく
きみの部屋のドアから出ていったばかりの恋人は
床から毛布をぜんぶ持っていってしまった
カーペットもまた きみの足元でうごめいている
もう何もかもが終わりなんだよ、ベイビー・ブルー

 

踏み石は残していくがいい 何かがきみを呼ぶ
別れを済ませた死者は忘れることだ きみを追いかけたりはしないさ
きみのドアを叩いている宿無しは
きみが昔着ていた服を着て立っている
別のマッチを擦って また新しく始めるんだ
もう何もかもが終わりなんだよ、ベイビー・ブルー

 

 

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