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Infidels 1983

アルバム・コメント 

Side A
1. Jokerman
2. Sweetheart Like You
3. Neighborhood Bally
4. Licence To Kill

Side B
1. Man Of Peace
2. Union Sundown
3. I & I
4. Don't Fall Apart On Me Tonight

 

 

 

 

 

 

 '79年の「Slow Train Coming」で多彩なギター・プレイを披露してくれた Dire Straits のマーク・ノップラーを、今度は共同プロデューサーとして迎えて制作された意欲作。

 注目はレゲエの強力リズム隊スライ&ロビーの参加で、かれらのがっちりしこしこと腰の据わった柱に、ノップラーと元ストーンズのミック・テイラーのギターががっぷり四つに組んだサウンドは、「ストーンズの音」という評も成程うなずけます。とにかくルパン三世の五右衛門の一太刀のような、シャープな切れ味の一枚です。

 個人的には初めてリアル・タイムで聴いたディランの新譜だったので思い入れが深く、確か寒い季節の頃だったと思うのだけど、レコードに針を落としたとたん流れてきたディランの声が、冷気を突き刺すようにするどく、そしてまたいつになく新鮮に聞こえたことを昨日のことのように覚えています。

 ダントツは何といってもアルバム・トップを飾る Jokerman でしょう。とらえ難い善悪両頭のイメージに満ちたミステリアスな道化男の讃歌。来日公演やウッドストック祭でも、この曲が鮮烈な幕開けに歌われていたのが思い出されます。他の曲もときには激しく、ときにはノップラーの小技の冴えたギターが絡みメロウに、それぞれツボを押さえた好演で聞かせてくれます。

 この時期、前作の「Shot Of Love」からこの「Infidels」までの時期を私は、'70年代の「Blood On The Tracks」や「Desire」の頃に続く、ディランの創作意欲がとても充実していた重要な時期であったと考えています。実際、後に発表されたこのアルバムの数多くのアウトテイクはどれもお蔵入りするには勿体ないくらいの出来映え(アルバム収録曲よりも良いものがある)で、いっそのこと二枚組でどんと出して欲しかった、と思ってしまいます。

 さてそのアウトテイクは、Someone's Got A Hold of My Heart, Tell Me, Lord Protect My Child, Foot Of Pride, Blind Willie McTell の全5曲が、「bootleg series vol.1-3」に収録されています。またもうひとつ、ウィリー・ネルソン作の Angel Flying To Close To The Ground という曲が、日本ではシングルのB面で発売されました。どこか賛美歌のような、いくぶん肩の力を抜いたゆったり目の佳作です。

 

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Jokerman

 

 

水上に立ちパンを投げ与えながら
鉄の頭を持った偶像の目が光を放っている
かなたの舟が霞の中へと消えていく
ハリケーンの最中に あなたは両手に蛇を握り生まれた
自由はもう間近に来ているが
真実がそれほど遠くにあるなら 何のためになるだろうか

ジョーカーマンがナイチンゲールの調べに舞い
月明かりの下 鳥は高みへ羽ばたく
Oh, Oh, Oh, Jokerman

 

またたく間に日は沈み
あなたは誰にも別れを告げず立ち上がる
天使が足踏みをしているところへ愚か者は殺到する
かれらの未来もまた恐怖に満ちたものなのに あなたはそれを明らかにはしない
もうひと皮脱ぎ捨てて
内なる迫害者のつねに一歩先をいく

ジョーカーマンがナイチンゲールの調べに舞い
月明かりの下 鳥は高みへ羽ばたく
Oh, Oh, Oh, Jokerman

 

あなたは山のような存在で 雲の上も歩ける
あなたは群衆を巧みに操る者 夢をねじ曲げる者
あなたはソドムとゴモラのもとへ赴くが
そこの誰もがあなたの姉妹との結婚を望まなくても 気にすることはないだろう
あなたは受難者の友人で 淫らな女の友人
燃えたぎる炉の中を覗くと 名無しの金持ちたちが見える

ジョーカーマンがナイチンゲールの調べに舞い
月明かりの下 鳥は高みへ羽ばたく
Oh, Oh, Oh, Jokerman

 

レビ記と申命記
そして密林と海の法だけが あなたの導き手
乳白色の馬上にたなびく薄明の霧の中で
実際のところミケランジェロが あなたの容貌を刻むことだってできただろう
動乱の土地より逃れ 野にやすむ
星空の下 まどろむあなたの顔を子犬が舐めている

ジョーカーマンがナイチンゲールの調べに舞い
月明かりの下 鳥は高みへ羽ばたく
Oh, Oh, Oh, Jokerman

 

ライフル銃の名手が足萎えと病人にそっと忍び寄る
説教師もかれらを探している だれが先につかまえるか分からない
警棒に放水器 催涙ガス 南京錠
火炎瓶に石つぶてが すべてのカーテンの後に隠されている
不誠実な心の判事たちが 自分たちの仕掛けた網にかかって死んでいる
夜がすべりこんでくるのも時間の問題

ジョーカーマンがナイチンゲールの調べに舞い
月明かりの下 鳥は高みへ羽ばたく
Oh, Oh, Oh, Jokerman

 

空もさだかでない灰色の おぼろな世界
今日ひとりの女が王子となる子供を産み 緋色の衣を着せた
やがてかれは司祭を意のままにし 刃を熱くする
孤児たちを路上から連れ出し 娼婦の足元に置くだろう
おお、ジョーカーマン かれの望みを知っているだろう
おお、ジョーカーマン だがあなたは何も応えない

ジョーカーマンがナイチンゲールの調べに舞い
月明かりの下 鳥は高みへ羽ばたく
Oh, Oh, Oh, Jokerman

 

 

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Licence To Kill

 

 

人間は地球を支配しているので
好き勝手に振る舞えると思っている
物事がすぐに変化しなければ、自分でそれを変えてしまう
ああ、人間は自らの破滅を生みだした
はじめの一歩は、月に触れたこと...

ところでおれの近所に一人の女がいる
夜が静けさを深める頃 彼女はただそこに座っている
彼女は言う 誰が人間から殺しの許可証をとりあげるのだろうか、と

 

奴らはかれを捕らえ 教え込み
生きる術を仕込んでおいて
病に至る道へかれが行くように仕向ける
そうしてかれを勲章とともに埋葬し
死体を中古車のように売りさばく

ところでおれの近所に一人の女がいる
丘に向かって 彼女はただそこに座っている
彼女は言う 誰が人間から殺しの許可証をとりあげるのだろうか、と

 

かれは破壊することにひどく夢中で、怖れ、錯乱している
かれの脳味噌は卓越した技術とやらでボロボロにされてきた
かれが信じるのは己の目だけ
だがその目は真実を伝えない

ところでおれの近所に一人の女がいる
震えるような冷気の中で 彼女はただそこに座っている
彼女は言う 誰が人間から殺しの許可証をとりあげるのだろうか、と

 

あんたが騒々しい輩であろうと みんなを楽しくさせる人間であろうと 罪つくりな人間であろうと 忍耐強い人であろうと
なんでもやってみたらいいさ
ひょっとしたら あんたは筋書きの中の役者に過ぎないのかも知れない
せいぜいそんなところだろうよ
あんたが自分の過ちにはっきりと気づくまでは

 

(よど)んだ水たまりの祭壇に かれは祈りを捧げ
水に映った己の姿を見て満足する
ああ、人間はフェア・プレイと対立している
すべてを欲し しかも自分のやり方で欲する

ところでおれの近所に一人の女がいる
夜が静けさを深める頃 彼女はただそこに座っている
彼女は言う 誰が人間から殺しの許可証をとりあげるのだろうか、と

 

 

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Man Of Peace

 

 

窓の外を見なよ あんたの好きそうな光景だよ
バンドがディキシーを演奏している
一人の男が腕を広げている
何かの指導者かも知れない この辺りの牧師かも知れない
悪魔はときに平和の人のようにやってくる

 

 

 

 

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