Joey
いつの年かさだかでないが
生まれはレッド・フック・ブルックリン
アコーディオンの調べで
目を覚まし
いつも家の外で
それがどこであろうとも
“何だってそんなふうなんだ?”と訊かれると
かれは応えたものだ “そうだからさ”
ラリーが長男で
ジョーイは下から二番目
ジョーイは“クレイジー”と呼ばれ
赤ん坊のときは“ガキ畜生”と呼ばれてた
かれらは賭博や
ノミ行為などで生計を立てていたという話だ
いつもマフィアと警官の間で
のっぴきならなかった
ジョーイ ジョーイ
路上の王 泥のこども
ジョーイ ジョーイ
何でやつらは あんたをこんな目に会わせたかったのだろう
かれらがライバルを葬ったという噂が流れたが
事実とはほど遠いものだった
かれらがほんとうにどこにいたの
誰も確かなことは知らなかったのさ
とにかく連中がラリーを絞め殺そうとして
ジョーイは怒り心頭
“おれに弾は当たらんさ”とばかり
その夜 かれは復讐へと赴いたってわけだ
夜明けに闘いの火ぶたは切られ
通りはもぬけの空
ジョーイとかれの兄弟たちは
散々な負けを喰らったが
何とか包囲網を突破して
その間に 五人の捕虜を捕らえた
地下室にかくした連中を
かれらはシロウト呼ばわりしてな
“ここを吹き飛ばしてお釈迦にしよう
コン・エディスン会社の仕業にしちまえばいいさ”
ひとりが叫ぶのを聞いて
人質たちは顫えあがった
だがジョーイが手をあげて歩み寄り こう言った
“おれたちはそんな連中とは違うさ
おれたちの望みは 静けさと平和が戻って
いつもの仕事に帰れることだ”
ジョーイ ジョーイ
路上の王 泥のこども
ジョーイ ジョーイ
何でやつらは あんたをこんな目に会わせたかったのだろう
警察署はジョーイを
ミスター・スミスとして引っ立てた
連中はかれに仲間がいるはずだと睨んだが
確かなことは分からず終いだった
面会の席で判事はジョーイ
“いま何時かね?”と尋ねた
“10時5分前” ジョーイが答えれば
判事いわく“あんたのもまさにその通りだよ”
ニーチェやウィルヘルム・ライヒを読みながら
かれはアティカで十年服した
一度だけストライキを止めさせるために
独房に入れられたこともあった
かれの親しい友人は黒人たちだった
なぜなって かれらはみんな
娑婆で束縛されて生きるのがどんなものか
ちゃんと分かっているみたいだったから
'71年に出所したときには
少し痩せてしまっていたが
ジミー・キャグニーのようにきめて
誓って言うが そりゃあ立派に見えたもんだ
かれはかつての暮らしに
何とか戻ろうと努力して ボスにこう言った
“やっと戻れたんだ
あとは好きなようにさせて欲しい”
ジョーイ ジョーイ
路上の王 泥のこども
ジョーイ ジョーイ
何でやつらは あんたをこんな目に会わせたかったのだろう
晩年にかれが
銃を持ち歩かなかったというのはほんとうだ
“子供たちが大勢うろちょろしてるし”とかれは言っていた
“あの子たちはそんなものを知っちゃいけないんだ”
そのくせかれは 生涯のにっくき仇敵の経営する
クラブハウスに堂々と歩いて行き
レジの金を巻きあげて 言ったものだ
“クレイジー・ジョーの仕業だと伝えな”
ある日 ニューヨークのクラム・バーで
かれはやられた
フォークをあげたときに
ドアから入ってくるのが見えたのだった
かれは家族を守ろうと
テーブルを押し倒し
そうして よろめきながら
リトル・イタリーの通りへと出ていったんだ
ジョーイ ジョーイ
路上の王 泥のこども
ジョーイ ジョーイ
何でやつらは あんたをこんな目に会わせたかったのだろう
姉妹のジャクリーンにカーメラ
それに母親のメアリーたちは みんな泣いていた
かれの親友のフランキーがこう言うのが聞こえた
“死んだんじゃねえ、眠ってるだけだ”
それから一人の老人の乗ったリムジーンが
墓地へ引き返していくのが見えた
思うにきっと 自分が救ってやれなかった息子へ
最後にひと言だけさよならを言ったんだろう
弱々しく萎えてしまった陽射しが プレジデント・ストリートと
喪に服したブルックリンの街中を覆った
かれの生家の近くの古い教会で
ミサは執り行われた
もし天国の神様がそこから見下ろしているんなら
いつの日かきっと かれを撃ち倒したやつらは
当然の報いを受けるはずだ
ジョーイ ジョーイ
路上の王 泥のこども
ジョーイ ジョーイ
何でやつらは あんたをこんな目に会わせたかったのだろう