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the bootleg series vol.3 1991

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Disc3
1. If You See Her, Say Hello
2. Golden Loom
3. Catfish
4. Seven Days
5. Ye Shall Be Changed
6. Every Grain Of Sand
7. You Changed My Life
8. Need A Woman
9. Angelina
10. Someone's Got A Hold Of My Heart
11. Tell Me
12. Lord Protect My Child
13. Foot Of Pride
14. Blind Willie McTell
15. When The Night Comes Falling From The Sky
16. Series Of Dreams

 

 

 

 

 

 

  

Golden Loom

 

 

鈍色の秋の宵 空に星がのぼり
ヨットが入り江を横切っていくのが見える
通りに張り出したユーカリ樹
きみがしのびよる気配で ふいにわたしはふり向く
水面の月明かり 漁師の娘 それらがわたしの部屋へと流れ込む
黄金(きん)のはた織り機とともに

 

不滅の聖堂のはたで わたしたちはまず足を清め
そしてふたりの影は出会い そしてふたりはワインを飲む
きみの顔のうえのほう 空腹の雲が見える
涙が流れ落ち いとも苦きその味
それから野生の花々が咲き誇る夏の日に きみは漂い去ってしまう
きみの黄金(きん)のはた織り機とともに

 

陰鬱な光のもと わたしは橋を歩いてわたる
夜の木戸と木戸のはざまで 車がみな解体されてしまったところ
蓮の花の尾をもったライオンが震えているのが見える
わたしはきみのベールをあげ その唇にキスをする
でもきみは行ってしまい わたしが思い出せるものといったら香水の香りと
きみの黄金(きん)のはた織り機だけ

 

 

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Seven Days

 

 

7日だ もう7日したら彼女はやってくる
到着する彼女をおれは駅で待ち受ける
もう7日を なんとか切り抜けなきゃな

おれが小さかった頃に あの人は行っちまったきり
その笑顔を見てからというもの おれは彼女の瞳が忘れられなくなった
彼女の顔ときたら空の太陽よりも光り輝いているんだ

いい子でいたぜ 待っている間 おれはずっといい子でいた
二の足を踏んでいたやましさを おれはずっと引きずっていたのかも知れない
だがもう7日で それもぜんぶちゃらさ

谷間のキス
裏通りではかっぱらい
とことんまでの殴り合い
やさしくなろうとしてるんだ
記憶の中の誰かさんと
昼間よりも明るい夜の中で

7日だ もう7日で結ばれよう
おれの期待どおりに 彼女はもうそこまで来ている
北からのわが美しき同志よ

 

 

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Lord Protect My Child

 

 

歳のわりには分別がある
母親にそっくりの目をしている
その胸にはよろこびがあふれ
わかく 自由奔放だ
たったひとつの願い----わたしがそばにいてやれないときには
主よ、この子をおまもりください

 

かれの青春はまさにはじまったばかりで
数世紀におよぶつらなりそのものだ
戯れるさまを見ているだけで 微笑んでしまう
私の身に何が起きようとかまわない
私の運命などどうなってもいい
主よ、この子をおまもりください

 

世界中が感覚を失っている
それに目を向け 嘆いてもいいが
ほんとうに価値のあるのはわずかなものだけ
私は多くを求めないし
欲しいものもない
主よ、この子をおまもりください

 

かれはわかく 理想に燃えている
汚され略奪された世界にあっても
希望と期待でいっぱいだ
もし私が道なかばでたおれ
明日を迎えられなくなったら
主よ、この子をおまもりください

 

神と人とが和解するときには
すべてがよくなると
そんな話を聞けるときもくるだろう
だが人が束縛から放たれ
清廉さがあまねくまで
主よ、この子をおまもりください

 

 

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Foot Of Pride

 

 

ライオンが人間の肉を食いちぎるように
一人の男になりすました女もおなじことができる
男の葬式でかれらは“Danny Boy”を歌い、そして主の祈り
牧師が裏切られたキリストについて語る
まさに大地が口を開いて男を呑み込んでしまったようなもの
高みにのぼりすぎたかれは 地面に投げ返されたのだ
上り坂にいる申し分ない連中について みんながどれだけ良いことを言ってるか知ってるだろう?
遅かれ早かれ 失墜するかれらを見ることになる

もはや引き返せない
おまえの自尊心の土台がくずれ落ちたら
後戻りはできない

 

ジェームスという名の兄弟がいるんだってな、名前と顔を忘れるんじゃないぜ
げっそりした頬で 混血のかれは
太陽をまっすぐに見すえて「復讐するは我にあり」と言った
そしてやつは酒を飲み、酒に溺れていく
もう一曲なにか歌ってくれないか “月まで愛して”やよそ者の歌を
決闘で敗れたエロール・フリンとの恋愛沙汰の歌を (*1)
同情だらけのこの頃じゃ、順応することまでが流行りだ
最後の釘を打ち込まれる前に おれにもういちど何か馬鹿げたことを言ってくれ

もはや引き返せない
おまえの自尊心の土台がくずれ落ちたら
後戻りはできない

 

レッドという名の退職したサラリーマンがいて 天国から放り出され、錯乱している
かれは手当たり次第に人を食い物にする
かれ曰く、扱うのは現金だけ でなければ墜落する飛行機のチケットを売りさばく
とてもあんたらが懇(ねんご)ろになれるような人物じゃないのさ
ミス・デライラはやつの女だ 彼女はペリシテ人で、あんたの運命を不思議なわざにかける (*2)
ココナッツ・パンを食わせ ベッドの中ではお尻の味見
もしあんたが、うつぶせで墓に寝かされても構わないんならね

もはや引き返せない
おまえの自尊心の土台がくずれ落ちたら
後戻りはできない

 

今夜、きみが会う男を連中が選んでくれるぜ
きみは馬鹿のふりをして ドアの通り抜け方を学ぶ
天国の門への入り方や
じぶんには重すぎる荷の運び方までもさ !
壇上でやつらは岩から水を汲み出そうとするだろう
一人の売春婦が帽子をまわし、百万ドル集めて礼を言うだろう
やつらはその罪業で得た金すべてを使い、大きな大学施設をいくつも作りたいのだ
スイス銀行までずっと “Amazing Grace”を歌いながら

もはや引き返せない
おまえの自尊心の土台がくずれ落ちたら
後戻りはできない

 

そこには素敵な人たちだっているのさ
かれらはあんたの心をすくませ、あんたに口の閉ざし方をおしえてくれる
かれらの額にはぎっしりと神秘のことばが記されている
かれらはベビー・ベッドの赤ん坊を殺し、“早死にするのは善人だけ”とうそぶく
やつらは神の慈悲など信じちゃいない
やつらに天罰が下るのは期待できそうにない
やつらはあんたを持ち上げるのも引きずり下ろすのも自由自在だ
やつらの思い通りにあんたを変えちまえるのさ

もはや引き返せない
おまえの自尊心の土台がくずれ落ちたら
後戻りはできない

 

そう、おれだってかれを愛していたんだろうな
あの丘をのぼっていくかれの姿がいまも心に思い浮かぶ
かれは頂上まで辿り着けたろうか? たぶん行けたはず そして墜落した
ある意志の力によって打ちのめされたのだ
ここには何ひとつ残っちゃいないさ、相棒よ 町中に恐怖をばらまいていった疫病の砂ぼこりが舞っているだけ
これから先、ここがおまえの始まりの場所になる
死者に死者を埋葬させろ やがておまえの時がくる
かれが死霊を蘇らせるそのとき 熱い鉄を吹きちらせ

もはや引き返せない
おまえの自尊心の土台がくずれ落ちたら
後戻りはできない

 

 

*1 エロール・フリン........1930年代に剣戦もの映画で活躍した美男活劇スター
*2 ペリシテ人........長年ユダヤ人と争った古代の民で、軽蔑的な俗物の意もある

 

 

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Blind Willie McTell

 

 

玄関口の柱に刺さった矢が
“ニュー・オーリンズからエルサレムに至るまでずっと
この国は有罪を宣告された”と告げているのを見た
多くの殉教者たちが倒れていった東テキサスを
わたしはずっと旅してきた
そう ブラインド・ウィリー・マクテルのように
ブルースを歌える者はもう誰もいない

 

みんなが天幕を取り外しているそばで
わたしはフクロウのさえずりを聴いた
実を結ばない樹の下の星だけが それを聴いていた
木炭画のようなジプシーの少女たちなら
その素敵な羽根飾りを見せびらかすこともできよう
だが ブラインド・ウィリー・マクテルのように
ブルースを歌える者はもう誰もいない

 

あの大きな農場が燃えているのを見るといい
鞭が鋭くしなる音を聞くといい
甘く咲き誇る木蓮の香りを嗅ぎ (*注記1)
奴隷船の亡霊を見るがいい
それら部族たちのうめき声と
請負人の鐘の音がわたしには聞こえる
そして ブラインド・ウィリー・マクテルのように
ブルースを歌える者はもう誰もいない

 

川のほとりに女がひとり
申し分のないハンサムな若者と連れだっている
男は騎士の従者のようにめかし込み
手には密造酒を抱えている
ハイウェイに鎖でつながれた囚人たちが並び (*注記2)
かれらの抗う叫び声がわたしには聞こえる
そう なのにブラインド・ウィリー・マクテルのように
ブルースを歌える者はもう誰もいない

 

天におられる主よ
あなたと同じものをわたしたちも手にしたい
だがそこにあるものといえば
権力と貪欲 そして腐敗の種だけのようにも思える
セント・ジェイムス・ホテルの窓の外を
わたしはじっと見つめている
そう ブラインド・ウィリー・マクテルのように
ブルースを歌える者はもう誰もいないから

 

 

(*注記1) 木蓮........アメリカ南部の象徴の花
(*注記2) Chain Gang........正確には「一本の鎖でつながれた屋外労働護送中の囚人たち」

 

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