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Planet Waves 1974

アルバム・コメント 

Side A
1. On A Night Like This
2. Going Going Gone
3. Tough Mama
4. Hazel
5. Something There Is About You
6. Forever Young

Side B
1. Forever Young
2. Dirge
3. You Angel You
4. Never Say Goodbye
5. Wedding Song

 

 

 

 

 

 

 Going Going Gone の歌が宣言するように、長い冬眠の巣穴から這い出てきて、ひさしぶりの大規模なツアーも決まった、レコード会社も変わった、ここは心機一転、ひとまず気心の知れた The Band とともにウォーミング・アップってな感じのアルバムでしょうか。

 実際、ディラン自身も何か変化の兆しを感じ始めていたのでしょう。まだ全開ではないけれど、その何かの端っこをしっかとつかみ、ややつんのめりがちで、ふたたび歩きはじめたディランの姿が浮かんできます。

 アルバム・トップの On A Night Like This は、まだどこか「NEW MORNING」の昼寝の名残を引きずっているような感じだし、You Angel You のような、いかにも即席ラーメンといった曲もある(でも結構、この単純さも好きなんだけど)。

 その中で、ふたつのバージョンを抱えた名曲 Forever Young や、シニカルな墓碑銘のような Dirge、決意を秘めた前述の Going Going Gone、そしてひさびさの生ギター一本で赤裸々に結婚生活を歌った Wedding Song などは、ふたたび対象とぶつかり合い火花を散らし始めたディランの姿勢が窺えます。おっさん、やる気だな。

 熟成ワインのような The Band の演奏は、時にはルーズで野放図に、時には柔軟で繊細に、そして全体的にはアコースティックでやや泥臭いサウンドを基調として、このアルバムを親しみと暖かみのあるものにしているような気がします。ディランのボーカルと絡み合うロバートソンの、藁クズのようなギターも渋いです。

 最後に、私がこのアルバムを買った当時、いちばん好きだったのは Hazel のやや感傷的な小品でした。

 またこのときに録音された Nobody 'Cept You というアウトテイクが、「the bootleg series vol.1-3」に収録されています。もうすこし磨き上げたら良い曲に仕上がったろうに、という惜しい素材です。

 

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Going Going Gone

 

 

いましがた おれがたどり着いたのは
柳の木でさえ撓(たわ)まないようなところ
これ以上は何も言わせないでくれ
もはやこれまで
おれは行く 行くんだ 行っちまう

 

おれは本のページを閉じる
そして 続きがどうなろうと
知ったこっちゃない
おれは行く 行くんだ 行っちまう

 

おれはほそい糸にしがみついていた
おれは律儀にやってきた
だがいまや 手遅れになる前に
抜け出すべきだ
おれは行く 行くんだ 行っちまう

 

祖母が言っていたものだ
“自分の心のままにおし
そうすれば 最後にはうまくいくはず
輝くものは黄金だけじゃないさ
お前がほんとうに愛している人と別れてしまってはいけないよ”

 

おれはひたすら歩き続けてきた
おれは崖っぷちを生きてきた
そしていま 岩棚へ入り込まないうちに
行かなくてはならない
そう、おれは行く 行くんだ 行っちまう

 

  

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Hazel

 

 

ヘイゼル さえないブロンドの髪
それでも きみと一緒にいるのを見られたって
ぼくは恥ずかしくはない
ぼくが欲してやまない何かがきみにはある
ああ、きみの何気ない愛の感触

 

ヘイゼル きみの瞳の中の星屑
きみは旅立つところだし ぼくもおなじさ
この果てしなく高い空をきみにあげよう
ああ、きみの何気ない愛の感触とひきかえに

 

いいや 自分がどれほど気に病んでいるかを
思い起こさせるものなど何も欲しくない
ぼくは ただ盲目になっていくばかり
丘にのぼったのに きみはそこにいないのだから

 

ヘイゼル きみが呼んだから来たんだよ
もうこれ以上 ぼくを焦らさないでおくれ
ぼくが欲してやまない何かがきみにはある
ああ、きみの何気ない愛の感触

 

 

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Something There Is About You

 

 

ぼくの内なるマッチに火をともすような何かが
きみにはある
きみの身のこなしか
それとも その放埒な髪のなびき様か
あるいは きみがぼくに思い出させる
昔の何か
別の世紀から渡ってきた
何かだろうか

 

若かりし日のまぼろしや感嘆は
とっくに振り払ったと思っていた
五大湖での雨降りの日々
懐かしいダルースの丘をあるきながら
ぼくとダニー・ロペズ
冷めた眼差し 陰気な夜 そう、それにルースもいた
ひさしく忘れていた真実を取り戻させる何かが
きみにはある

 

唐突に きみと出くわし
ぼくの精神は歌う
そんなに遠くを見なくともよい
きみはさまざまなものの魂だ
ぼくは自分が誠実だと言うこともできた
やさしく一息で言ってのけることもできた
だがそれは きみにとっては残酷なことで
ぼくにとっては ほとんど死も同然だったろう

 

気品と優雅さを備えて動く何かが
きみにはある
ぼくは竜巻のなかにいたが
いまはもっとましな場所にいる
ぼくの手は軍刀を
きみは錫杖を手にとった
このぼくを容易に近づけさせないような何かが
きみにはある

 

 

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Foever Young

 

 

あなたに神の祝福がとこしえにあらんことを
あなたの望みがすべてかない
あなたがひとの好意をうけいれ
あなたもまた ひとのためにならんことを
星までとどく梯子を築き
一歩づつのぼりつめ
あなたがいつまでも若くあらんことを

いつまでも若くあれ いつまでも若くあれ
あなたよ いつまでも若くあれ

 

正しく育たんことを
まことに育たんことを
つねに真実を知り
あなたをとりまく光に気づかんことを
たえまぬ勇気をもち
まっすぐに立ち たくましくあらんことを
そして あなたがいつまでも若くあらんことを

いつまでも若くあれ いつまでも若くあれ
あなたよ いつまでも若くあれ

 

あなたの手がいつも忙しく
足がすばやくあらんことを
風向きにまどわされない
堅固ないしずえを持たんことを
あなたの心がいつも喜びに溢れ
あなたの歌がいつも歌われんことを
そして あなたがいつまでも若くあらんことを

いつまでも若くあれ いつまでも若くあれ
あなたよ いつまでも若くあれ

 

 

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Wedding Song

 

 

これまで以上にきみを愛する
時よりも愛よりもお金よりも
そして空の星よりも きみを愛する
狂気よりも 波間に漂う夢よりもきみを愛する
生命そのものよりもきみを愛する
ぼくにとって きみはそれだけ相応しい

 

きみといっしょに歩むようになってから
円は完結した
陽の光のあたらない
道化師の中庭にたむろしていた
街路の顔たちや幽霊の部屋とはもうおさらばだ
これまで以上にぼくはきみを愛していて
いまだ始まってさえもいない

 

きみはぼくに息をふきかけ
ぼくの人生をより豊かなものにしてくれた
貧窮の深みに陥っていたとき
ぼくに与えることを教えてくれた
ぼくの夢から涙をぬぐい
ぼくを穴からひきあげてくれた
これまで以上にきみを愛することが
ぼくを魂へと結びつける

 

きみは赤ん坊をくれた 一人、二人、三人、と
そればかりか ぼくの命まで救ってくれた
“目には目を、歯には歯を”のごとく
きみの愛はナイフのように直截だ
きみへのぼくの想いは息つくひまもなく
もし嘘をついたなら それがぼくを死に至らしめるだろうが
自分の感覚が死に絶えるのを見届けるために
ぼくはきみに この世界を生贄として捧げることだろう

 

この地上で奏でるための
きみとぼくの調べを
たとえどれほどの価値であろうと
二人で精一杯 演奏しよう
失われたものは失われ
洪水に呑み込まれたものは取り戻せないが
きみはぼくの歓びであり
血よりも深く愛している

 

世界全体を作り直すなど
けっしてぼくの義務ではないし
突撃の合図を鳴らすこともまた
ぼくの意図ではない
なぜなら それらすべてよりも
屈することのない愛できみを愛している
そしてもし永遠というものがあるならば
そこでふたたびきみを愛するだろう

 

ああ、分かるだろう
ぼくと並んで立つために きみは生まれたのだ
ぼくはきみといっしょになるために生まれ
きみはぼくの花嫁になるために生まれた
きみはぼくのもうひとつの片割れで
パズルの欠けたピースのようなもの
そしてぼくは 終わることのない愛で
これまで以上にきみを愛する

 

日々 きみはぼくの潮流を変え
ぼくが見るべきものを示してくれる
きみの近くにいる ただそのことが
ぼくにはいちばん自然なこと
たとえ何が起きようとも
けっしてきみを手放しはしまい
なぜなら いまや過去は消え去り
これまで以上にぼくはきみを愛するから

 

 

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