1967年3月に発売されたディラン初のベスト・アルバムで、2作目の「The Freewheelin' Bob Dylan」から7作目「Blonde On Blonde」までのアルバムからの選曲です。

　個人的にははじめて買ったディランのレコードで、素朴な弾き語りのフォーク時代からディラン・ロックの開花期まで、いまでは古典ともいえる名曲の数々を初体験し、擦り切れるまで聴き込んだ懐かしい編集盤ですが、CD時代のいまでは10曲という曲数はチト淋しいかなという気がしないでもありません。いっそ、vol.2 と併せて再構成し、CD2枚組にしてしまったらとも思うのですが...

　ちなみにこのレコード盤には、ミルトン・グレイザーの描いたシンプルかつシュールで魅力的な大判のポスターが添付されていて、20代の私は特別製の額に入れて大切に部屋に飾っていました。あのポスターはぜひCD盤にも付けて欲しいものです。

　さて、このアルバムの発売当時の目玉は、「Highway 61 Revisited」と「Blonde On Blonde」の間にシングルとして出されたアルバム未収録の Positively 4th Street が収録されていたことです。アル・クーパーのオルガンが新鮮で、曲の構造も辛辣な歌詞も至って単純な楽曲なのですが、私は昔からこれが大好きでした。トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズと共に来日したときも冒頭にこの曲をやってくれたのですが、何と輝きに満ちたサウンドだったことか!　私はこのシンプルな曲と共に唾を吐きながら、いく度も得難い勇気とタイトル通りの Positive な気持ちを貰ったものです。ま、もともと自分自身が持っていた力だけどね、結局は。

　この曲はその後 '85年の「Biograph」にも収録されましたが、これからディランを聴き始めるという人が '60年代のディランの輝きを垣間見るという意味では、入門編としてコンパクトでオーソドックスな編集盤だと思います。これが気に入ったら、ぜひ vol.2 の方も揃えてみてください。こちらも負けず劣らずの名曲がひしめいております。

Positively 4th Street

　

　

おれのことを友達だなんて抜かすとは
あんたも図々しい野郎だな
おれが落ち込んでいても
にたにた笑って突っ立てるだけだったのによ

　

手を貸してあげようだなんて
いったいどんな神経をしてるんだ
あんたは勝ち目のある側に
つきたいだけなんだろう

　

おれに一発喰らわされただなんて
そんなんじゃないことくらい承知だろう
それほど傷ついたのなら
どうして正直に見せないのさ

　

信じられなくなったとは
お笑いだぜ
鼻から信じちゃいないことぐらい
自分でも分かっているだろう

　

何であんたがおれのことを
隠れてこそこそ言うのか　分かってるぜ
あんたがつるんでいる連中と
おれもかつてはつきあっていたんだから

　

何から始めたらいいのか分からないことを
隠そうとする連中と
おれがつきあうほど
間抜けだとでも思っていたのか

　

通りでおれに会えば
いつも驚いたふりをして
“やあ、どうだい”“がんばれよ”なんて言うが
ぜんぜん本気じゃないのさ

　

ほんとうはおれが
すっかりダメになっちまった様を見たいくせに
どうしてはっきりと
そう　わめかないんだ

　

罪つくりな女たちをあんたが抱きしめたって
何とも思わんね
おれが大泥棒だったら
そんなものは盗むさ

　

あんたが自分の地位や身分に
満足してないのは知っているが
おれの知ったこっちゃないってのが
分からないのか

　

一度でいいから
おれの靴の中身になってもらいたいもんだ
ほんの一瞬でいいから
替わってみてくれ

　

そうさ　一度でいいから
おれの靴の中身になってみてくれ
あんたがおれの足を引っ張っているのが
それで分かるだろうよ

　

　

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