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Blonde On Blonde 1966

アルバム・コメント 

Record

Side A
1. Rainy Day Woman #12&35
2. Pledging My Time
3. Visions Of Johana
4. One Of Us Must Know (Sooner Or Later)

Side B
1. I Want You
2. Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again
3. Leopard-Skin Pill-Box Hat
4. Just Like A Woman

 

Record

Side A
1. Most Likely You Go Your Way (And I'll Go Mine)
2. Temporary Like Achilles
3. Absolutely Sweet Marie
4. Forth Time Around
5. Obviously Five Believers

Side B
1. Sad-Eyed Lady Of The Lowlands

 

 

 

 

 

 

 それはあの細くてワイルドな水銀のような音だ。それはメタリックで明るい金色をしている。それがどのような音に思われるか知らないが、それがぼくの音だ。その音をいつも得ることができるとは限らない。

 

 ボブ・ディラン・ミンストレル・ショーの夕べ。まるであの寺山修司の実験映画のような書き割りの前に、小人や巡礼者の一群、花を持ったニンフ、ヒョウ皮の縁なし帽子をかぶった女、ジョアンナのまぼろし、鉄道員や牧師、メンフィス・ブルースを歌う男、騒々しく陽気な楽隊などが次々と現れては、唾を吐いたり、跳びまわったり、花を捧げたり、嘆き悲しんだり、酔っぱらったり、宣誓したりしているような音楽。

 「Bringing It All Back」で突破口を開き、前作「Higway 61 Revisited」でエンジン全開といったディランが、そのままアクセルを踏み続け、とめどなくあふれ出てくる奔放なイマジネーションに身をまかせて制作したレコードでは2枚組のこのアルバムは、一般にいわれているようにディラン・ロックの頂点・金字塔・理想郷というさまざまな形容がどれも当てはまる、ふくよかで豊かな感性に満ちた素晴らしい作品だと思います。

 まさに山本リンダの「もうどうにも止まらない」状態のディラン。ただ、このまま突き進んでいたなら、ひょっとしたら彼もジミ・ヘンやジャニスのように悲惨な死を迎えていたかも知れない。そんな危惧を抱かせるほどの危ういスピード感が、この時期のディランには感じられます。そしてこのアルバム発売2ヶ月後のあの運命的なバイク事故。

 すでにレッド・ゾーンを越える限界のスピードで走り続けていたディランは、あの事故によってレース場からもといた田舎道に戻され、来た道を振り返り、じっくりと自分の内面を眺めなおす時間を与えられた、それはとても幸運なことだったと思えるのです。

 サウンド的には、前作「Higway 61 Revisited」がまるで鋭利なナイフのような性急でギラギラした感覚だったのに比べると、このアルバムはおそらくナッシュビルでの録音ということも影響しているのでしょうが、どこかメロウで暖かみのあるサウンド、あるいは泥臭い南部的でブルージィーな肌触りを感じます。

 ほとんどはナッシュビルの地元のスタジオ・ミュージシャンたちとのセッションですが、One Of Us Must Know (Sooner Or Later) だけは唯一、後のザ・バンドのメンバーとニューヨークにて録音されています。

 内容はもう言わずもがなの名作揃い、ディラン・ロックの最良の見本市といった感じで、冒頭のマーチン・バンド・スタイルから、シンプルなロック、泥臭いブルース、ポップでメロウなラブ・ソング、生ギターのアルペジオが印象的なワルツ風の曲と、存分に愉しめることは請け合い。

 たとえばアルバムの最後を飾る10分以上もの長い、後に妻となるサラに捧げたラブ・ソングは、作品の完成度としては Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again や Just Like A Woman のような極上の名作に比べると若干ひけをとるものの、その温もりに満ちたサウンドと誠実味あふれるディランの果てしないボーカルを聞いているだけで、このままこの曲が終わらないでくれたら... と何度も思ったものです。また詩の内容としては、個人的には Visions Of Johana なんかがいちばん好きかな...

 この頃のアウトテイクとしては「bootleg series vol.1-3」に未発表の I'll Keep It With Mine、完成させてアルバムに収録して欲しかったイカした She's Your Lover Now のそれぞれ中途半端なリハーサル・テイクが収録されています。

 

 

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Rainy Day Woman #12&35

 

 

ひとかどの人間になろうとすると
みんなはあんたを石もて打つだろう
予告どおりに あんたを石もて打つだろう
家へ帰ろうとすれば 石もて打つだろうし
あんたがひとりぼっちでいても 石もて打つだろう
だが おれはきっとさびしいとも思わんさ
みんな ふらふらになっちまえばいい

 

通りを歩いていると
みんなはあんたを石もて打つだろう
席につこうとすると
みんなはあんたを石もて打つだろう
床の上を歩けば 石もて打つだろうし
ドアに向かって歩けば 石もて打つだろう
だが おれはきっとさびしいとも思わんさ
みんな ふらふらになっちまえばいい

 

朝食のテーブルで
みんなはあんたを石もて打つだろう
あんたが若く有能であれば
みんなはあんたを石もて打つだろう
ひと儲けたくらめば 石もて打つだろうし
石もて打ってから “幸運を”と言うだろう
だが おれはきっとさびしいとも思わんさ
みんな ふらふらになっちまえばいい

 

みんなは石もて打ってから これで終わりだと言うだろう
みんなは石もて打っておいて また戻ってくるだろう
車に乗ってれば 石もて打つだろうし
ギターを弾いてれば 石もて打つだろう
だが おれはきっとさびしいとも思わんさ
みんな ふらふらになっちまえばいい

 

ひとりで歩いていると
みんなはあんたを石もて打つだろう
帰り道で
みんなはあんたを石もて打つだろう
石もて打っておいて “きみは勇敢だ”と言い
あんたが墓場に降ろされたら あんたを石もて打つだろう
だが おれはきっとさびしいとも思わんさ
みんな ふらふらになっちまえばいい

 

 

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I Want You

 

 

心やましい葬儀屋は嘆息し
孤独なオルガン奏者は泣き
銀のサックスは“きみを断るべきだ”と云い
ひび割れた鐘と色褪せたホルンは
顔に嘲りを吹きつけるけれど
でも そんなふうに
きみを失うために ぼくは生まれてきたわけじゃない

きみが欲しい きみが欲しい
欲しくてたまらない
ねえ、きみが欲しいよ

 

救世主が眠りこけ
母親たちが涙に暮れている通りで
酩酊した政治家は跳びはね
みんな きみを待っている
そしてぼくが待っているのは
割れたコップで飲むのをさえぎられることと
きみのために門を開けて欲しいと頼まれること

きみが欲しい きみが欲しい
欲しくてたまらない
ねえ、きみが欲しいよ

 

ぼくの父親たちはみんな
本当の愛というものを知らずに 死んでしまった
なのに ぼくがそのことを考えないから
かれらの娘たちがぼくをへこませる

 

さて、スペードの女王のもとへ帰り
ぼくの付き人と話でもしよう
ぼくが物怖じせず彼女を見つめることを
彼女は知っている
彼女はぼくによくしてくれるし
彼女の知らないことなど何もなく
ぼくがいたい場所も彼女は知っているが
そんなことはどうでもいいことだ

きみが欲しい きみが欲しい
欲しくてたまらない
ねえ、きみが欲しいよ

 

ところで、チャイナ服を着たきみのダンス坊やが
ぼくに話しかけ ぼくは奴のフルートを取り上げた
そう かれに対して
ぼくはたしかに無粋だったな
でもそうしたのは 思うに 奴が嘘をついたからだ
奴がきみをドライブに連れて行ったからだ
(とき)が奴に味方していたからだ
なのに ぼくときたら…

きみが欲しい きみが欲しい
欲しくてたまらない
ねえ、きみが欲しいよ

  

 

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Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again

 

 

ああ、ママ これでほんとうにお終いなのか
またもやメンフィス・ブルースを道連れに車の中で立ち往生

  

 

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Leopard-Skin Pill-Box Hat

 

 

きみがおニューのヒョウ革のふちなし帽をかぶっているのを見たぜ
きみがおニューのヒョウ革のふちなし帽をかぶっているのを見たのさちょいとおしえてくれよ
きみのおつむがどんな感じなのか
そのおニューのヒョウ革のふちなし帽をかぶっているとさ !!

 

そいつはなかなかイカシてるぜ なあ、いつか飛び乗らせてくれないか
なに、ほんとうに上等な類のものか調べてみたいだけさ
そいつがきみの頭の上でバランスとっている様は
まるでマットレスがワインのボトルに乗っかっているようなものだぜ
きみのおニューのヒョウ革のふちなし帽ときたら !!

 

日の出が見たいなら いい場所を知ってるよ
いつか見に行かないか なかよく座って眺めにさ
ベルトをおつむに巻きつけたオイラと
おニューのヒョウ革のふちなし帽のなかで
腰かけているきみの二人でさ !!

 

きみに会ってもいいかと訊いたら、あんたの身体に悪い、と医者が言う
そいつを無視して会いに来たら 代わりに奴を見つけちまったってわけさ
奴がオイラをだますのは構わないんだが
願わくば 奴の頭から取っておいてもらいたかったね
きみのおニューのヒョウ革のふちなし帽をさ !!

 

てなわけで、ちっとも知らなかったが きみは新しいボーイフレンドができたってわけだ
きみたちが抱き合っているのを見たのさ きみはガレージのドアを閉めとくのを忘れてただろ
きみは奴が金目当てで君を愛していると思ってるかも知れないが
そいつは違うね 奴のほんとうのお目当ては
きみのそのおニューのヒョウ革のふちなし帽さ !!

 

 

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Just Like A Woman

 

 

今夜 ぼくが雨のなかに立っていても
誰も苦しみを感じない
あの娘があたらしい服を手に入れたのは
みんな知っているけれど
このごろじゃ リボンの結びが
巻き毛からはずれてしまったようだ

そう、彼女はいっぱしの女のようにふるまう
そう、彼女はいっぱしの女のように愛し合う
そう、彼女はいっぱしの女のようにうずく
けれども 小さな女の子のように崩れてしまう

 

クイーン・マリーは ぼくのともだち
きっとまた会いに行くはず
誰も予想がつかないことだが
彼女の霧と覚醒剤と真珠をもってして
他のみんなと同じように分かるまでは
あの娘は祝福されない

そう、彼女はいっぱしの女のようにふるまう
そう、彼女はいっぱしの女のように愛し合う
そう、彼女はいっぱしの女のようにうずく
けれども 小さな女の子のように崩れてしまう

 

はじめから雨で
ぼくは渇きでほとんど死にそうだったから ここへ来た
きみの積年の呪いがぼくを傷つけるが
この痛みはもっとタチが悪い
ここにはいられないし
それに、はっきりしているじゃないか   

 

ぼくにはふさわしくないし
二人とも もうお終いにするべきだ
いつかまた出会い
友達として紹介されたら
かつてこのぼくが きみにぞっこんだったとは
ばらさないで欲しい

ああ、きみはいっぱしの女のようにふるまう
そう、きみはいっぱしの女のように愛し合う
そう、きみはいっぱしの女のようにうずく
けれども 小さな女の子のように崩れてしまう

 

 

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Absolutely Sweet Marie

 

 

きみの踏切の遮断機、そいつを跳びこえられないのさ
分かるだろう? ときどきひどく難しいんだ
きみが果たせなかったぜんぶの約束とともに
おれはここに立ってトランペットを鳴らすだけ
けれど、きみは今夜どこにいるんだい、スウィート・マリー?

待ってたんだぜ なかば病気になりながら
待ってたんだぜ きみがおれを憎んでいても
待ってたんだぜ 凍てつく車のなかで
おれには他に行く場所があるときみが知っていてもさ
それで、きみは今夜どこにいるんだい、スウィート・マリー?

まあ、だれでもおれみたいにはなれるだろうよ、確実に
とはいえ、それほど多くきみのようにはならないだろうぜ、幸いにも

ところで、きみが見込んでいた6頭の白い馬は
とうとう刑務所までたどり着いたよ
だが法の外で暮らすには、誠実でなきゃならない
その通りだと、きみはいつも言うんだろうな
けれど、きみは今夜どこにいるんだい、スウィート・マリー?

ところで何でそうなったか分からんが、川船の船頭はおれの運命を知っている
他の連中のは知らない、きみのもだ みんな待たなきゃならないだろう

さて、おれのポケットには熱病がころがりこんでいる
ペルシャ人の酔っ払いがおれのあとを尾いてくる
そうさ、奴をきみの家に誘ってもいいが、錠が開けられないんだ
おれに鍵をくれるのを忘れてただろう
おお、きみは今夜どこにいるんだい、スウィート・マリー?

おれのすべての手紙が 悪い仲間に住所を教えることなかれと
教えてくれたとき おれはムショに居たというわけだ
そしていまおれはここ、きみのバルコニーの残骸に立って
きみの黄色い鉄道を見ている
いったい全体きみは今夜どこにいるんだい、スウィート・マリー?

 

 

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