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Street-Legal 1978

アルバム・コメント

Side A
1. Changing Of The Guards
2. New Pony
3. No Time To Think
4. Baby Stop Crying

Side B
1. Is Your Love In Vain ?
2. Senor (Tales Of Yankee Power)
3. True Love Tends To Forget
4. We Better Talk This Over
5. Where Are You Tonight ? (Jorny Through Dark Heat)

 

 

 

 

 

 

 全米No.1に輝いた「Desire」と衝撃的な宗教告白の「Slow Train Coming」の間に挟まって、どうも印象の薄いアルバムとして評価されているようですが、個人的には良い作品も入っていて、それほど捨てたものじゃないはずだと思っていました。ただいかせん、大所帯の割にはチンケでぼそぼそとしたサウンドが、安っぽいショー・バンドのようで貧相だったのが弱点でした。

 それが何と、発売後20年を経て今年'99年、当時のプロデューサーのドン・デヴィートが“もっといいアルバムになるはずだった”とミキシングのやり直しを申し出たのをディランが承諾し、完全リマスター盤として再発売されたのだから驚きました。過去のアルバムがこれだけリニューアルされるというのも、あまり例がないのではないでしょうか。

 では肝心のサウンドの方はというと、まだ聴いておられない方は十分期待してくれて結構です。墓場で杭を打たれて眠っていたドラキュラ伯爵が息を吹き返したかのような見事な仕上がり。やればできるじゃないの、デヴィートくん。サウンドは実にクリアでシャープ、ディランのボーカルは迫真を増し、タイトなドラムスが前面に出て、左右に切れの良いギター、そして全体にすごくラフで迫力に満ち満ちている、とまるで別のアルバムを聴いているような感動ものです。これはもう、昔買ったLPなどゴミ箱行きだあ。

 このアルバムを私は、精神的な危機の告白集、と見るのですが、その後のライブでもたびたび歌われている Senor (Tales Of Yankee Power) が、それを代表しているように思います。その他にもメロディが魅力的なポジィティブなラブ・ソングの Is Your Love In Vain ? や、'60年代の作品を思わせるようなイメージが豊饒な Changing Of The Guards ゃ No Time To Think 、イギリスでヒットしたシンプルな Baby Stop Crying 、また今回のリマスターで蘇った New Pony や We Better Talk This Over など、歌詞の面でもサウンド的にも決して「Desire」や「Blood On The Tracks」にも劣らない質の良い作品群だと思うのですがいかがでしょうか。またリズムの区切り方やディランのボーカル・コントロールが、後の「Slow Train Coming」へとつながっていく点も面白いように思います。

 この時期、ディランは大規模なワールド・ツアーを敢行し、日本初公演の模様が後に「At Budokan」として発売されましたが、このアルバムもほぼ同じメンバーで、極東ツアーと全米/ヨーロッパ・ツアーの合間にわずか5日間で録音されました。また私生活の面ではサラとの離婚成立や、意欲的だった映画「レナルド・アンド・クララ」の興行的失敗など、波瀾な時期でもありました。

 とにかく既に旧盤をお持ちの方はぜひお買い直しを、まだ一度も聴いたことのない方はなおさら、今回のこのリマスター盤で過小評価だったこの充実の作品を見直して頂きたいと思います。

 プロデュースでどれだけアルバムが様変わりしてしまうか、そして同じことですが、ミュージシャンがいくら良い演奏をしてもリミックスの段階でいかに容易にその輝きを潰してしまうことが多いか。特にディランの'80年代のアルバムなどは一部の例外を除いて、そうした不運なケースが多いように思います。こんな素敵なやり直しなら、どんどんやって貰いたいものです。

 最後に、この頃おなじスタジオで、ディランはバック・ボーカルのヘレナ・スプリングスとアルバム一枚分以上の新曲を共作してレコーディングしていますが、残念ながらすべて未発表となっています。そのうちの If I Don't There By The Morning と Walk Out In The Rain の二曲が、後にエリック・クラプトンによってカバーされています。

 

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Changing Of The Guards

 

 

十六年
善き羊飼いが悲嘆にくれる草原(くさはら)に *注1
十六の旗印が結束した
落ち葉の下にその翼をひろげ
絶望した男たち、絶望した女たちは分裂した

 

運命の女神が手招き
わたしは物陰から市場へと歩み出た
商人に盗人 権力への渇望 最期の取引は破綻した
夏至の前夜 塔のそばで彼女は
彼女の生まれた草原のようにかぐわしい

 

無情なる月
いとおしい少女に想いをめぐらせながら
大尉は祝典に臨んでいる
彼女の漆黒の表情はとらえようがない
かれは落胆しているが それでも己の愛が
報われることを信じてやまない

 

彼女は頭髪を剃られ
ゼウスとアポロの間に引き裂かれた
真っ黒なナイチンゲールを抱いた使者が到着
階段で彼女を見かけ 後を追わずにはいられず
泉の先まで降りていくと
そこで彼女はベールを外された

 

わたしはよろめき
ハート形の刺青の下に
いまだにうずく傷口を抱え
みじめな破滅を馬でとおりすぎた
背教の司祭たちと 二心ある若い魔女たちが
分け与えているのは
わたしがきみにあげたはずの花束

 

卑劣な兵士たちの姿を映す
鏡の宮殿
果てしない道のりと 泣き叫ぶ鐘の音
彼女の思い出が保護された空き部屋では
天使の声が
いっとき前の魂にささやく

 

48時間の後 日はのぼり始め
アメリカシャクナゲと落石、それに切れた鎖のはたで
彼女は眠りからかれを起こす
つぎは何をしでかすつもりなのかと 彼女はつめ寄り
引き倒されるが
かれの長い金髪を握って離さない

 

みなさん と、かれは言った
わたしはあなた方の組織はいらない
わたしはあなた方の靴を磨き あなた方の山を動かし
あなた方のカードにしるしをつけた
なのにエデンの園は燃えている
足抜けの覚悟をするか
勇気を出して歩哨の交代につくかのどちらかだ

 

きらめく車輪に静けさと絢爛を載せ
平和は来よう
けれども 彼女のニセの偶像の凋落と
破壊の王と女王のはざまで退却する青ざめた亡霊とともに
ひれ伏す無慈悲な死の他には
何の報いもありはしない

 

 

*注1 The Good Shepherd.....大文字になると「イエス・キリスト」の意

(きはらさんの訳を参考にさせて頂きました)

 

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Baby Stop Crying

 

 

どこかのならず者と 落ちるところまで落ちてたんだな
でもきみは戻ってきた
おれの拳銃をとってくれないか
もう物事の善し悪しが分からなくなっちまったよ

お願いだから もう泣かないでくれ
お願いだから もう泣かないでくれ
お願いだから もう泣かないでくれ
二人とも知っているさ 太陽はいつも輝くだろうって
だからもう 頼むから泣きやんでおくれ
おれの心が引き裂かれるから

 

川へ行きな
そこで落ち合おう
川へ行きな
おれが償ってやるよ

お願いだから もう泣かないでくれ
お願いだから もう泣かないでくれ
お願いだから もう泣かないでくれ
二人とも知っているさ 太陽はいつも輝くだろうって
だからもう 頼むから泣きやんでおくれ
おれの心が引き裂かれるから

 

誰か助けてくれるひとを探していたり
仲間や 話のできるともだちが
欲しいっていうんなら
おれがここにいるよ

お願いだから もう泣かないでくれ
お願いだから もう泣かないでくれ
お願いだから もう泣かないでくれ
二人とも知っているさ 太陽はいつも輝くだろうって
だからもう 頼むから泣きやんでおくれ
おれの心が引き裂かれるから

 

きみは何度も傷ついてきたし
きみが何を考えているか おれには分かる
医者でなくたって
きみが恋にやつれているくらい分かるさ

お願いだから もう泣かないでくれ
お願いだから もう泣かないでくれ
お願いだから もう泣かないでくれ
二人とも知っているさ 太陽はいつも輝くだろうって
だからもう 頼むから泣きやんでおくれ
おれの心が引き裂かれるから

 

 

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Senor (Tales Of Yankee Power)

 

 

セニョール セニョール
わたしたちはどこへ向かっているのか知っていますか
リンカーンの田舎道 あるいはハルマゲドン
前にも来たような道だけど
そこには真実があるのでしょうか セニョール

 

セニョール セニョール
彼女がどこに隠れているか知っていますか
いつまで乗り続けたらいいのだろう
いつまで扉を注視していなくてはならないのか
そこには慰めがあるのでしょうか セニョール

 

上甲板にいまも邪悪な風が吹いている
彼女の首にいまも鉄十字勲章がぶらさがっている
彼女が一度だけわたしを抱きしめ“忘れないで”と言ったあの空き地で
いまもマーチン・バンドが演奏している

 

セニョール セニョール
あのケバケバしい貨車が見えます
ドラゴンのしっぽの臭いがします
もうこの緊張には耐えられない
誰に連絡したらいいのかおしえてくれませんか セニョール

 

わたしが裸になり跪く前のことで覚えているのは
汽車いっぱいの愚か者が磁場にはまりこんでいたこと
そして破れた旗を持ち きらめく指輪をしたジプシーがこう言った
「いいかい、これはもう夢ではない ほんとうのことだ」

 

セニョール セニョール
やつらの心は革のように固いのを知っているでしょう
一分待ってください わたしもいっしょに行かせて欲しい
なんとか床から立ちあがろうとしているところ
あなたさえよければ わたしは用意ができています セニョール

 

セニョール セニョール
これらのケーブルを断ち切り
これらのテーブルをひっくりかえしましょう
ここにはもう何の意味もない
わたしたちは何を待っているのかおしえてくれませんか セニョール

 

 

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