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John Wesley Harding 1967

アルバム・コメント

 

Side A
1. John Wesley Harding
2. As I Went Out One Morning
3. I Dreamed I Saw St.Augustine
4. All Along The Wacthtower
5. The Ballad Of Frankie Lee And Judas Priest
6. Drifter's Escape

Side B
1. Dear Landlord
2. I Am A Lonesome Hobo
3. I Pity The Poor Immigrant
4. The Wicked Messenger
5. Down Along The Cove
6. I'll Be Your Baby Tonight

  

 

 

 

 

 

I Dreamed I Saw St.Augustine

 

 

聖オーガスティンを夢で見た
きみやわたしとおなじように生きていた
ひどく惨めな気持ちで
あちこちの土地をさすらいながら
腕に毛布をかかえて
純金の外套を纏(まと)
とっくに売られてしまった
ほんとうの魂を探していた

 

“起きよ、起きよ”と かれは周囲を憚らぬ
大声で叫んだ
“有能な王と后よ、出てきて
私の悲しい申し立てを聴きなさい
あなたがたのうちに
固有の殉教者というものはいない
だがそれなりに自分の道を歩めば
ひとりぼっちでないことが分かるだろう”

 

聖オーガスティンを夢で見た
燃えるような息をして生きていた
そして夢で わたしは
かれを死に追いやった大勢のうちのひとりだった
おお、わたしは怒りのうちに夢から覚め
とてもさびしく おびえていた
グラスに指を突き立て
(こうべ)をたれて 泣いた

 

 

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All Along The Wacthtower

 

 

“ここから脱け出す道が 何かあるはずよ”
道化が盗っ人に言った
“あまりに混乱しすぎて 心の安らぐ間もありゃしない
経営者の連中はあたしのワインを飲むし 百姓どもはあたしの土地を耕してる
なのに一人として それがどれだけのものか知っちゃいないんだから”

 

“まあ、そんなに熱くならなくてもいいさ”
盗っ人が優しく言ってやった
“生きることは戯れにすぎないと思っている奴は ここいらの仲間内にも大勢いる
だがおれとあんたはそんなことは卒業したし これはおれたちの運命じゃない
もう嘘を喋るのはよそう 夜もおそい”

 

物見櫓からずっと 王子たちは見張りを続けていた
その間中 女たちは落ち着かずに出たり入ったり-----裸足の召使いたちもそうだった
どこか遠くの方で 山猫の咆吼
馬に乗った二人連れが近づいてきた 風がうなり始めた

 

 

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Dear Landlord

 

 

親愛なる領主様
どうか わたしの魂に値段をつけないでください
わたしの荷は重く
わたしの夢は手におえない
あの蒸気船の汽笛が鳴る頃には
納めるべきものはすべて納めますから
あなたが生きていると感じるやり方で
よろしく受け取ってください

 

親愛なる領主様
どうか わたしの話に耳を傾けてください
ずいぶん苦しんだことでしょうが
それはあなたひとりではない
わたしたちは誰しも すばやくたっぷりと得るために
ときに懸命に働いて
見えるけれど触れることのできないもので
人生を満たすことができるのです

 

親愛なる領主様
どうか わたしの訴えを無碍にしないでください
言い争いをしようとか
よそへ行ってしまおうというのではない
わたしたちは互いに それぞれ特別な才能をもち
それに ご承知だと思いますが
わたしのことを軽んじなければ
わたしも あなたのことを軽んじませんから

 

 

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I Am A Lonesome Hobo

 

 

おれはさびしいホーボー
家族も友人もなく
ひとの暮らしの始まるところが
まさにおれの暮らしの果てるところ
ワイロをつかったり
ゆすりに 騙り
乞食以外のことなら
およそ何でも年期が入っている

 

かつてはおれもひどく羽振りがよく
何ひとつ 不自由なぞしていなかった
口には14カラットの金歯
に 絹の下着
だが兄弟を信用せず
濡れ衣を着せたため
それが運の尽きで
面汚しの迷い路へ

 

寛大なる紳士淑女のみなさん
おれはもう すぐに消えますよ
だが 行っちまう前に
みなさんに ちょいと警告しておきたい
ケチな妬みなど捨てて
この世の法(のり)にしばられずに生きな
そして 道で行き倒れにならないよう
あんた自身の判断をしっかり持つこった

 

 

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I Pity The Poor Immigrant

 

 

貧しき移民をあわれむ
故郷にとどまろうとして
精いっぱい悪事をはたらいて
いつも結局は ひとりぼっちになってしまうあいつを
あの男は指先で欺き
一息ごとに嘘をつく
じぶんの人生をはげしく憎み
おなじように死を怖れている

 

貧しき移民をあわれむ
やつの力は無駄についやされ
やつの天国はクロムウェルの鉄騎隊のよう *註
やつの涙は雨のようだ
食べても満たされず
聞いても見えず
富そのものに溺れ
わたしに背を向けた

 

貧しき移民をあわれむ
やつは泥のなかを踏みつけ
口を笑いで充たし
血によって町を建てる
その夢想はあげくの果て
ガラスのように砕けるだろう
貧しき移民をあわれむ
やつの歓びがわきあがるそのとき

 

*クロムウェル/イギリスの清教徒革命において活躍した軍人。「鉄騎兵隊 Ironside」を組織して革命に勝利し、国王チャールズ1世を処刑、独裁政治をひいた。

 

 

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The Wicked Messenger

 

イーライからやって来た
邪悪な使い
つまらぬものばかりで
こころを満たし
だれの使いかと訊ねれば
親指でこたえる
やつの舌は世辞しか喋れなかったから

州議会ホールの裏手を
ねぐらにしているやつが
ときおり戻ってくるのを見かけた
ある日のこと
やつはメモを片手にあらわれた
そこにはこう書かれていた
“おれの足の裏が、くそったれめ、燃えてやがる!”

おお、木の葉が落ち
海が裂け
やつと衝突した人々は
少なくなかったが
語られたわずかな言葉が
やつのこころを解き放った
“よい知らせでなければ、知らせなくてよい”

 

*Eli・イーライ/Eli はもともと神の意で、アメリカには実際にその名を冠した町があるらしい。が、ここでは逆説的な架空の場所であるのかも知れない。

 

 

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I'll Be Your Baby Tonight

 

 

ドアを閉め 目を閉じて
もう何も心配しなくてもいい
今宵ぼくは きみのものだよ

 

ブラインドを下ろし 灯りを消そう
こわがらなくていい
今宵ぼくは きみのものだよ

 

あのツグミ鳥は飛んでいってしまうけれど
忘れちまおう
あのでっぷり肥った月がスプーンのように輝くだろうが
放っておこう
悔やみはしないさ

 

さあ、こわがらずに 靴を脱ぎ捨て
酒ビンをもって ここへおいで
今宵ぼくは きみのものだよ

 

 

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