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Empire Burlesque 1985

アルバム・コメント 

Side A
1. Tight Connection To My Heart
2. Seeing The Real You At Last
3. I'll Remember You
4. Clean Cut Kid
5. Never Gonna Be The Same Again

Side B
1. Trust Yourself
2. Emotionally Yours
3. When The Night Comes Falling From The Sky
4. Something's Burning, Baby
5. Dark Eyes

 

 

 

 

 

 

 しょっぱなから詰まらないジョークで申し訳ないのですが、このアルバムのジャケット、一部の巷では「倍賞美津子」と呼ばれているそうな。はっはっは、と私もつい笑ってしまいました。

 あの偽善的なお祭り騒ぎ「We Are The World」(シンディ・ローパーとディランのボーカルは良かった)や「Live Aid」(ヤク中患者のようなキースも見事だったけど、演奏より「アメリカの農民も救おう」と言ったディランの「発言」が粋だった)の一連の催しで世界中が浮かれ、ライオネル・リッチーなどが大ボケをかましていたイベントの頃に発表されたアルバムです。

 はじめに一聴したとき、前作「Infidels」があまりに締まった音作りだったためか、何だこりゃ、「Infidels」のお粗末なアウト・テイク集じゃないか、と思ってしまいました。ヒップ・ホップの雄だか何だか知らないが、アーサー・ベイカーの音作りは、いかにもチープなクリスマスの飾り付けのようで、音もスカスカの隙間だらけ....

 しかしこのアルバム、私は作品としては結構いいものが入っているアルバムだと評価しています。

 Seeing The Real You At Last や Clean Cut Kid は、踊り出したくなるような小粋なリフが効いているし、I'll Remember You や Emotionally Yours のラブ・ソングはこれまでのディランにはなかったようなポップでシンプルな新鮮味があるし、ブルージィな Trust Yourself や、そして久々に生ギターの弾き語りによる Dark Eyes なども、実に深い味わい。大作の When The Night Comes Falling From The Sky も、やや大袈裟な面構えのような気もするけれども、なかなかに聴かせてくれます。

 おそらく狙いとしては、前作「Infidels」で不評だったキリスト教三部作の宗教色にとりあえず区切りをつけて、カラフルでポップでいい意味で大衆受けのするような作品を、ということでのアーサー・ベイカーの登用だったと思うのだけど、残念ながら完全にミス・マッチでした。ああ、いっそ私がプロデュースをしたかった....

 願わくば、誰が別の人の手でもう一度リミックスし直して、再発売して欲しい。そうすれば充分、「Infidels」と並ぶような80年代の充実作となるだろうと思います。その意味では、まことに不運なアルバムでした。

 

 さて、このアルバムからは Tight Connection To My Heart がシングル・カットされ、プロモーション・ビデオの撮影が日本で行われたのも話題になりました。佐野元春などの日本のアーティストも撮影に参加したそうですが、出来上がった映像は、何やら似合わない野球帽を被ってへらへらと踊っているディランの姿が痛々しいような代物でした。

 アウト・テイクは現在のところ正式なものは出ていませんが、When The Night Comes Falling From The Sky を何とスプリングスティーンのEストリート・バンドのメンバーをバックにスタジオ録音した別バージョンが「the bootleg series vol.1-3」に収録されていて、天駆ける野生馬のようなスリリングな演奏が素晴らしいテイクです。

 また前述のシングル曲の Tight Connection To My Heart は、「Infidels」のセッションの時のものが Someone's Got A Hold of My Heart というタイトルで同じく「the bootleg series vol.1-3」に収録されていますが、テンポを下げたゆったりしたアレンジで、ディランの歌い方もとても繊細かつ優美で、私はこちらのテイクの方が好きです。

 そうそう、アルバムの方ですが、バックにはトム・ペティ一家のハートブレイカーズの面々が参加していて、ソツのないサポートをしてくださっております。ベモント・テンチあたりにプロデュースを任せとけば良かったのになあ.....と、まだしつこく言ってますが。

 最後の最後。お粗末な「Live Aid」の後に行われた、トム・ペティらを従えた「Farm Aid」の演奏は、実に気迫のこもった最高のステージでした....

 

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I'll Remember You

 

 

きみを思い出すだろうよ
ぼくが安らぎのすべてを忘れてしまったときに
きみはぼくの真実だった
きみはぼくの最善だった
絶体絶命だったとき
誰よりもすばやく
きみはぼくの真ん中にすべり込んできた
誰にもかえりみられず
ひとりぼっちでいるとき
ぼくはきみを思い出すだろう

 

きみを思い出すだろうよ
きみの残したながい痕跡の端で
やり残したことが沢山あったけど
うまくやるには時間が足りなかった
ほんの数回会っただけなのに
二度と忘れられないような人たちもいる
薔薇の花が枯れて
日の当たらぬ場所にいるとき
ぼくはきみを思い出すだろう

 

きみを愛そうと ぼくはしなかったろうか
気にかけようとは しなかったか
きみの横で眠り 泣いていたのか
きみの髪に雨が吹きつけているときに…

 

きみを思い出すだろうよ
松の木に風が吹きわたるときに
いい感じで通り抜けていったのはきみだった
理解してくれたのも きみだった
ぼくには言えなかったけれど
きみがぼくに対して
使うだろう言い方をするならば
結局
“親愛なるやさしい友だち”
ぼくはきみを思い出すだろう

 

 

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Trust Yourself

 

 

あんた自身を信頼しな
自分で唯一の最良だと知っていることをするために
あんた自身を信頼しな

あんた自身を信頼しな
まったく先の見えないことをするために
あんた自身を信頼しな

あんたに美を見せるわたしを信頼してはいけない
美がただ錆びついていくだけのときには
あんたが誰かを必要なら できるはず
あんた自身を信頼しな

 

あんた自身を信頼しな
最後に真実が試されるやり方を学ぶために
あんた自身を信頼しな

あんた自身を信頼しな
仮定も疑問もない小径を見つけだすために
あんた自身を信頼しな

あんたに真実を見せるわたしを信頼してはいけな
真実がただ塵と灰でしかないときに
あんたが誰かを必要なら できるはず
あんた自身を信頼しな

 

オオカミや盗賊どものはびこる土地で
あんたはいつも ずっとひとりでやってきた
不信心な男にあんたの希望を託したり
信じる者の奴隷になったりしなさんな

 

あんた自身を信頼しな
そうすればくだらない連中があんたを打ちのめしても
あんたは失望することはないだろう

あんた自身を信頼しな
答えの見つからない場所で答えを探すことはない
あんたに愛を見せるわたしを信頼してはいけない

わたしの愛がただの肉欲でしかないときには
あんたが誰かを必要なら できるはず
あんた自身を信頼しな

 

 

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Dark Eyes

 

 

紳士たちが喋くりあい 川岸には真夜中の月
みんな杯を飲み干し、立ち去っていく
どれ、わたしもそろそろ腰をあげようか
生と死が記憶された どこか別の世界にわたしは住んでいる
地球はそこで恋人たちの真珠と数珠つながりとなり
そしてわたしは ただ暗い瞳を見つめるばかり

 

雄鶏が遠くで啼き ひとりの兵士が深い祈りを捧げている
子供たちが道を踏み外し 母親がいくら探しても見つからない
しかしわたしには蘇る死者のために打ち鳴らされている
べつのドラムの音が聞こえる
かれらがくるとき 野生の獣は誰を怖れるだろうか
そしてわたしは ただ暗い瞳を見つめるばかり

 

すべての意図された目的には思慮深くあれ とかれらは言う
そして復讐は甘美なものだと
かれらの側から見たらそうなのだろう
だがわたしは 美しさのないかれらのゲームには何も感じられない
わたしが感じるのは炎と熱気だけ
そしてわたしは ただ暗い瞳を見つめるばかり

 

ひとりのフランスの少女が楽園にいて 酔っ払いの男がその舵を握っている
スピードと鋼鉄の堕落した神々に対して 空腹は大きな代償を支払う
ああ、時は短く 一日は甘美
情欲が飛ぶ矢の行方を決めるだろう
百万の顔が足元に並んでいるが
わたしはただ 暗い瞳を見つめるばかり

 

 

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