061. 大阪・西天満 ギャラリー菊 中野和典「無意識の楽園」出版記念 個展

体感する

 

 

■061. 大阪・西天満 ギャラリー菊 中野和典「無意識の楽園」出版記念 個展 (2018.4.6)

 




  みわたすかぎりの平原のそのしたに、どんなふかいくらがりがひそんでいるか、ひとはたいてい気づかない。むかし、「ヴァリス」というフィリップKディック の小説でこんな言葉があった。 一、おまえに同意する者は狂っている。 二、おまえに同意しない者は権力を持っている。 同意する者だけがそのくらがりに入っていけるのであり、狂いは、権力のくびきから落剥した刻印である。植物たちがひしめく、あかるい光の世界を脱落し、ふ かいふかいくらがりへと下降していけば、そこにあるのは冷たい地層の感触。ざらついた、けれど妙にこころやすらぐ冥府であり、目を凝らせば、何やらちらち らと赤い舌をのぞかせる爬虫類がひそみ、古生物にも似た厚いかなしい皮膚に身を固めた魚類がたゆたい、モノクロの白い花弁が音もなくひらき、その奥に、巨 大な、もの言わぬ、眼窩の落ちたなにものかが未来永劫を沈思している。この絵を描いていた日々のことを画家はこう記している、「1994年、娘が血液の難 病を患った。それまでの人生の困難は乗り越えてきたが、どうにもできない無力感を味わった。地下に恵みがあるように、娘の心身の奥底にも不思議な生命力が あるはずだと、ひたすら祈り、その思いを描き続けた」  ふかいくらがりに潜伏しているものは、おのれを射る矢でもあり、同時にことばが放擲したさいごの 智慧でもある。西天満の雑居ビルの、まるでヨナが呑み込まれた大魚の臓腑のような不思議な空間で、そんなことを考えた。 

中野和典「無意識の楽園」出版記 念 個展

■ギャラリー菊 2018年 4月1日(日)〜4月7日(土)12:00〜18:30(初日は13:00より、最終日16:00まで)
http://plaza.harmonix.ne.jp/~artnavi/02gal.pak/03gal-tikamiti/03rental-gal/15-kiku-hp/02-kiku.html#Anchor-exhibition 

2018.4.6

 

 

 

体感する