024. 西成・鈴成座 市川おもちゃ劇団

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■024. 西成・鈴成座 市川おもちゃ劇団 (2012.2.17)

 






 

 今日はいつもより遅くまで残って仕事を片づけて、明日は朝からチビと二人、電車に乗って大阪へ。天王寺動物園を覗いて、台湾ラーメンを食べて、それから4年ぶりの市川おもちゃ劇団を西成のどまんなか、鈴成座へ見に行くのだよ。

天王寺動物園HOMEPAGE http://www.jazga.or.jp/tennoji/

中華料理 雲隆 http://sukapara.exblog.jp/15424686/

鈴成座・満座劇場 http://www.mine-office.jp/index.html

2012.2.17

 

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 土曜日。もともとは葛城山へ雪すべりに行きたいと子が言い出したのだが、生憎と山頂レポートでは雪は現在皆無との事。それで天王子動物園はどうかと逆提案すると「それもいいね」と賛成してくれた。待てよ、大阪へ出るのであれば・・・ と市川おもちゃ劇団の巡業予定を覗けば、なんとまさに西成の鈴成座で公演中! さっそくベッドの中に入った子に「市川おもちゃが大阪に来ているんだけど」と伝えると、「え、行きたい、行きたい」と。で動物園とのカップリングになった。忙しいです。

  当日は公民館のアルバイトへ行くYの車に乗っけてもらいJR駅まで。朝8時過ぎの難波行きに乗り、天王寺で地下鉄に乗り換えて動物園前、それからまだ眠り かけのジャンジャン横丁をぶらぶらと抜けていったら、9時半の開園まで優に30分はあった。仕方なく通天閣の足元をうろうろとして、改装してしまった浪速 倶楽部も見て、古いヤクザ物の映画のポスターを眺めて、自動販売機のジュースがなぜここでは50円なのかの簡単な説明を子にして、早くも営業している店で 早くも生ビールを横に串かつなどを頬張っている幸福なおじさんたちを眺めて、あんまり寒かったので最後に「2月一杯で店仕舞いします」と貼り紙された棚す かすかのコンビニで子のお八つのチョコレートなどを買ってしばし寒さを凌いで開園を待った。9時半の開園。子の希望で暖房の効いたアイファー(爬虫類やカ メなど)館をゆっくり見て、アフリカサバンナ・エリアを抜け、動物園の西側半分をやや駆け足で通り抜ける形で回った。いちばん面白かったのは子どもがう じゃうじゃ生れて群れを成して走り回っているチュウゴクオオカミ。この群れの中で突如起こった噛み付き合いの壮絶な争いを目の当たりにしたこと。オオカミ はふだんはシベリアンハスキーみたいな大人しそうな顔をしているが、牙を剥いた表情はそれが一変して、これなら人間の子どももかっさらって喰うだろう、と いう顔つきになる。また最近、九州の本屋で見かけていつか読みたいと思っている小倉美惠子「オオカミの護符」(新潮社)を 思い出し、オオカミと山の神についてしばし民俗学をしたりしてしまったのだった。子も夢中でデジカメを向けて動画を撮影していた。園内のトイレでオシッコ を摂らせてから、10時45分に動物園を出て、ジャンジャン横丁を抜けて地下鉄・動物園前駅2番出口すぐのわたしのお気に入りの台湾ラーメンの店「雲隆」で 早めの昼食。わたしは台湾ラーメンと焼き飯のセット(680円)、子が天津飯(480円)、二人で餃子(180円)。安くて旨い。まさに理想の店。さてこ こから西成区鶴見橋にある鈴成座へは、歩くにはちょっと子の足には負担が多く時間の余裕もなく、また地下鉄などを乗り継いでも場所的に中途半端なため、 ちょっと奮発して商店街の前に止っていたタクシーに乗って劇場のまん前まで連れていってもらった。動物園前から900円。ほどよく開演20分前の11時 45分。いよいよ来ました、鈴成座。鶴見橋2丁目のかの安売りスーパー玉出の裏、車がやっと一台通れるほどの細い路地裏に構えている。間口は町の電気屋さ んって感じか。手前にガレージのようなスペースがあってそこに花輪もぐるりと飾られているのだが、前の道が狭いから開場前にここの客を並ばせるのだろうか とも思った。左手に細い、パチンコ屋の裏口のような通路があって、そこを抜けると入口があり、券売機があり、受付でおばちゃんが座っている。当日券は大人 1500円、子は1000円。(新世界の浪速倶楽部は1200円) チケットと交換におばちゃんがホッカイロを呉れる。中へ入ると、花道をはさんで右に座 席が88席、左に桟敷席が29席。土曜の昼に最終、お客は50名くらいであったかな。ちょっとさみしい。子をトイレに行かせて、前から三列目の右端に陣 取って開演を待つ。受付のおばちゃんがわざわざやって来て「さっき、渡さなかったね〜 これは座長さんから」と子に綿菓子を呉れた。それから15時まで、 約三時間のショー。まずは顔見世の踊りをいくつか、そして任侠股旅ものの芝居「松五郎懺悔」、グッズと前売り券の宣伝をはさんで、ふたたび踊り、最後に三 味線太鼓ショー。新世界の浪速倶楽部でサワさんやわたしの悪友A、子の4人で見たのは4年前だ。その後わたしはあのめくるめく非日常の幻惑が忘れられず、 一人生野区のコリアンタウンにある明生座へ 仕事を早引きして見に行ったものだった。正直に言ってあの頃のおもちゃ劇団の“幻惑”は残念ながら薄れていた。原因はかつての座員の多くが変わってしまっ ていたことによる。座長である市川おもちゃと絡んでいた(ある意味ナンバー2といえる)若手の市川やんちゃがいなくなった。演技や踊りはそれほどでもな かったけれど、いわゆる紅一点の別嬪役で華ある市川舞子がいなくなった。男気あふれるダイナミックな踊りが意外と魅力的であった市川大地がいなくなった。 そして縁の下の力持ち的な貫禄のベテラン・大川龍子がいなくなった。この穴は大きい。あれこれネットで調べてみたら、所詮は2チャンネル的な噂に過ぎない が、芸能関係の女に夢中になった市川おもちゃが出て行ったとか、市川舞子が妻子のある座長に手を出そうとして劇団にいられなくなったとか、実際のところは 判らないけれど、まあ年中旅から旅への暮らしで人間関係もいろいろとあるのかも知れない。それでも残念だな。よそから応援できていた高羽ひろきとか、 「OS劇場からきて貰った」と市川おもちゃが紹介していた背の高い手馴れたお姉ちゃんとか、あの二人で何とか体を成している面もあったと思う。一見二枚目 風だが涼しげな顔で微笑むしか芸のなさそな市川司では役不足だし、あんころ餅のような太っちょのあばさんの踊りもちょっと食傷気味。あとはまだまだ新米か 端役レベルしかおらず、おもちゃジュニアの二人の可愛い子役には思わず頬もほころぶがそれ以上ではない。結局は座長の市川おもちゃと、実の母であるベテラ ンの市川恵子のふんばりで何とか持っているといった感じは否めず、少々痛々しかった。早く体制を立て直して、またあの幻惑的な非日常の舞台を見せてくださ い。まあそれでも久しぶりの大衆演劇、三時間たっぷり、それなりに愉しませて頂きました。子はとくにお芝居で笑い転げていた。帰りは路地を抜けて四つ橋線 の花園駅まで歩いて、大国町経由で天王寺へ。Yへのおみやげにシュークリームを三つ買ってJR線に乗った。子は席が空いているという父の誘いに首を振って ドア近くにひとり立ち、iPODで最近はまっている桂枝雀の落語を聴きながら車窓の景色を眺めている。

2012.2.19

 

 

 



 

 

 

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