016. 大阪・国立国際美術館 「やなぎみわ 婆々娘々(ポーポーニャンニャン)!」

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■016. 大阪・国立国際美術館 「やなぎみわ 婆々娘々(ポーポーニャンニャン)!」 (2009.8.23)

 






 大阪・中之島にある国立国際美術館にて「ルーヴル美術館展 美の宮殿の子どもたち」を観覧。ところが館内のレストランでお昼を済ませてから、何気に足を延ばした別フロアで開催中の「やなぎみわ 婆々娘々(ポーポーニャンニャン)!」が メインのルーヴルを完全に喰っちまった! 何の予備知識も先入観もなかったから、余計ガツンとヤラレたのかも知れない。強烈でシュールな老婆たちが並ぶ特 大カラー写真の森(マイ・グランドマザーズ・シリーズ)を抜け、残酷と死の匂いがぷんぷんと漂うモノクロ・トーンの世界(寓話シリーズ)の途中で子宮のよ うな闇のトンネルを抜けたと思ったら、そこにはしわくちゃに垂れた乳房を振り乱し砂漠に屹立する巨大な老女たちの姿が並び(ウィンドスウェブト・ウイメ ン・シリーズ)、会場の隅に設置された黒いテントの奥のスクリーンではその黒テントを背負って砂漠を移動する彼女たちの静と動の不思議な映像が流されてい るのだった。いったい何なんだ、この突き抜けるような活力溢れる老婆たちのおぞましくもパワフルな多面体世界は! やなぎみわ作品のこの強烈な体験は、続 いて見た別企画「慶応義塾をめぐる芸術家たち」のふだんなら充分に魅了されただろう西脇順三郎、瀧口修造、イサム・ノグチらの作品さえもその影を薄くさせ てしまった。アートとは本来、こういう爆弾みたいなものなんだろうな。価値を逆転し、感覚を錯乱させ、気がつけば剥き出しにされた存在のぎらぎらした輝き を前に立ちすくんでいる。やなぎみわから、しばらく目が離せない。

 

●My Grandmothers Series l マイ・グランドマザーズ・シリーズ

一般公募したモデルに「50年後の自らの理想の姿」を問いかけ、イン
タヴューを繰り返すことで浮かび上がった老婆像を、特殊メイクやCG
を用いて作品を完成させたこのシリーズは、作家とモデルとのコラボ
レーションにより生まれた作品であると言えよう。モデルが思い描く
将来像は、やなぎにとっても理想の祖母たちであり、祖母像の種類が
多ければ多いほど、自分の将来の可能性が増すかのように、やなぎは
多様な祖母像を生み出し続けている。

 

●Fairy Tale Series l 寓話シリーズ

2004年から2006年にかけて制作された写真と映像からなるシリーズ。
グリムやアンデルセン、また世界各地で語り継がれた寓話や説話、あ
るいはガルシア・マルケスの小説などから老婆と少女が登場するストー
リーをベースに、子どもがマスクをかぶり老若の両方を演じることで、
物語に登場する老女と少女は交換が可能であり、幼いものの持つ無垢
さと老女の校滑さは、その多くが男性の視線で描かれた女性像の表裏
であることを表現している。

 

●Windswept Women Series l ウィンドスウェブト・ウイメン・シリーズ

2009年6月7日から開催されている第53回ヴェネチア・ビエンナーレ
日本館で初めて紹介された新作。荒野にすっくと立ち、はちきれんば
かりの豊かな胸をゆらしながら、どこからか聞こえる音曲に体を揺らす
老女の姿,、一方でかつては豊かであったろう胸を見せ、同じように
髪の毛を振り乱しながら踊る老女。老若の交換を見事に描き切った
〈フェアリー・テール〉シリーズの延長線上に位置しながら、異なる世代
の女性たちの集いを家族写真のように見立て、老若、虚実、生と死の
社会通念をかく乱させようと試みている。

※以上、個展パンフから

 

朝日新聞社「ルーヴル美術館展 美の宮殿の子どもたち」公式サイト http://www.asahi.com/louvre09/

国立国際美術館 http://www.nmao.go.jp/japanese/home.html

やなぎみわオフィシャルサイト http://www.yanagimiwa.net/

2009.8.23

 

 

 



 

 

 

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