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■112. 神奈川県横浜 孤独死した伯父の死 (2021.12.15)
亡くなった伯父の相続放棄を相続対象となるわたしの母(妹)、関東に住む従兄二人(長兄の息子)の三人でいっしょに申し立てることになって昨日、あらため て奈良の合同弁護士事務所のS弁護士へ正式に依頼のメールを入れた。料金は書類費等を含めて一人65,000円、三人合わせて20万円ほどになる。遺産を 相続するのではなく、相続を放棄するためにこれだけの費用が必要なわけで、なんとも複雑な気分だ。Web上では独力で書類を集めてみずから家庭裁判所へ提 出する人もいるようで、わたしだったらそうしたかも知れないが、母はともあれ、大手企業の重役をしている従兄も、銀行勤めのその弟も懐は豊かでその料金で まったく構わないと言うので、もちろんわたしも異論はない。それに万が一、(ないとは思うが)伯父がややこしい筋から借金などをしていたとしても、弁護士 に任せることができるから安心な面はある。二人の従兄には弁護士事務所から委任状用紙と料金の振込先が郵送され、それぞれじぶんたちの戸籍謄本と共に返送 する。母の分の委任状はわたしが先に預かってきたし、戸籍謄本もすでに取得済みだが、問題はS弁護士から言われた死んだ伯父の住民票(除票)と戸籍謄本 (除籍)の取得である。これについては当然ながら伯父の住所と本籍地が必要なわけだが、住所はともかく、長年音信不通であった伯父の本籍地はだれも知らな い。そこで生活保護でお世話になって先般も役所でお会いした生活支援課のEさんに電話を入れて本籍地を教えてもらえないかと訊いたのだが、それは教えられ ないとの返答であった。そして、火葬のときに発行した埋火葬許可証に故人の住所も本籍地も記してある、と言う。ああ、失態。火葬場で斎場のSさんが「これ は納骨のときに必要ですから、ここに貼っておきますね。墓地の石屋さんに当日渡してください」と言われて骨壺を入れた箱の蓋の上にぺたっと貼りつけたのだ が、あれを写しておけばよかった。遺骨は当初、母の家へ郵送してもらう手筈だったのだが、奈良へ帰ってきた母が一人暮らしの家に兄弟とはいえ疎遠になって いた者の遺骨を置いておくのが不安になって、勝手に斎場へ電話を入れて納骨までしばらく斎場で預かって欲しいと依頼し、それをあとで聞いた妹が母と衝突し て現在断絶状態。そんなごたごたがあったので斎場のSさんにはこれ以上依頼ごとをするわけにもいかず、又たとえお願いしたとしても個人情報を伝えることは できないだろう。最悪の場合は東京に住む従兄に鎌倉の斎場まで行ってもらって埋火葬許可書をコピーしてきてもらうしかないわけだが、もうひとつ、伯父の住 民票請求の際に本籍地を記載してもらうという手もある。そこで横浜市の栄区役所の戸籍課と住民票係の窓口にそれぞれ電話をして、事情を伝えて郵送請求でど んな書類が必要かと訊いてみた。どちらの担当者も、請求者である母と故人の伯父との関係が確認できる書類が必要だが、それはすでに手元にある母の戸籍謄本 に母の両親の名前が記載されているので、それと伯父の両親がおなじであれば確認が可能なので母の戸籍謄本の写し、身分証明の写し(保険証)、役所のHPか らDLできる請求書類、返信用封筒と切手、手数料(小為替)で大丈夫だという。それで試しにDLした「住民票の写し等請求書(郵送)」をプリントアウトし て記入の仕方で若干不明な部分があったので問い合わせ先の横浜市郵送請求事務センターに電話をしたところ、電話口の担当のTさんが「相続放棄を理由とする 請求では本籍地は入れられないことになっている」と言う。「でも栄区役所の戸籍課の方は出せると言ってましたよ」と言うと、こんどは母と伯父との関係確認 について「伯父の本籍地がもしも横浜市外であった場合には、伯父の両親の名前が横浜市では確認できないので、お母さまの戸籍謄本だけでは不充分だ」と言 う。ではその場合、他にどんな書類が必要なのかと問えば、母の両親を軸とした除籍謄本を入手したらそれで母と伯父が兄妹であることが証明できる。そのため には母の本籍を奈良=茨城=東京の複数個所と遡って請求していって、母が婚姻によって親の戸籍から抜けた時点での実家の本籍地を突き止め、その実家の本籍 地にいまは亡き両親の除籍謄本を請求しなければならないというわけだ。すべてを郵送依頼するとして、いったいどれだけの時間がかかるだろう。ちなみに相続 放棄の申し立ては伯父が死んだ日から三か月以内に提出しなければならない。「分かりました。では伯父の本籍地が横浜市内であるかどうかを教えてもらえませ んか?」と言うと、それは教えられないと言う。わたしがもし母の戸籍謄本だけで請求するというのであれば請求してもらって、書類が届いてからこちらで出せ るかどうか判断すると言う。このあたりから、わたしはそろそろキレかけ始めていた。「そもそも栄区役所の戸籍課の人はそれで大丈夫だと言っていたのに、そ れは伯父の本籍が横浜市内であるという前提での話でその前提が漏れていたわけですね」 「はい、そういうことになりますね」 「伯父の本籍が横浜市内か否 かで準備する書類が異なるというのであれば、こちらもどういう書類を用意したらいいのか分からないので請求することも出来ない。そちらでは伯父の本籍地を 情報として所有しているわけだから、せめて横浜市内か市外かだけでも教えてもらえないのですか?」 「それは個人情報になるのでお教えできません」 「本 籍地をぜんぶ教えてくれって言ってるわけじゃないですよ。横浜市内か否かを伝えることは別に個人情報でも何でもないでしょ」 Tさんはそんな会話の間、最 初は上司と相談しますと言って電話を折り返し、次に返答に窮した際は市役所の方へ確認してみますと言って電話を切った。小一時間待ってかかってきたのは横 浜市郵送請求事務センターのTさんではなく、横浜市役所市民局のEさんであった。「わたしどもの説明不足でいろいろご迷惑をおかけしたので、今回は特別に お母さまの戸籍謄本だけで住民票を出させていただきます」ということであった。「特例なんですね?」と訊くと、「はい、そうです」と言う。「伯父のように 身寄りがない孤独死で、おなじように長いこと連絡不通で、おなじように親類が相続放棄をするのに本籍地が分からない場合もあると思うんですが?」と訊く と、そのときはやはり戸籍をたどっていってもらうしかないし、実際に多くの人はそうしてもらっていると言う。そんな次第で今日はほとんど半日がこれらのや りとりと書類作成でつぶれた。以前からそうだったけれど今回あらためて思ったのは、わたしは役所的思考には馴染めないということ。いつもたいてい、喧嘩に なる。そしてもうひとつ、今回はじめてつくづく思い知ったこと。戸籍制度、いらねー*
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